北澤 秀朗の
WORKS流行通信

<その2:タイヤウォーマーのお話>

(99年1月25日号、475部発行)

(編集長より)
今回は、タイヤウォーマーをテーマとしました。ちょうど、この原稿が書かれた 前後に、RCワールドでもウォーマー特集をやっていましたが、こちらはより 実践的な話となっています。ちょっと長いですが、ご一読あれ。

* * *

今回、ワークスの流行としてタイヤウォーマーを取り上げたいと思います。
現在市販されているタイヤウォーマーには、いろんな物がありますよね。
どれを買おうか迷う人もいるでしょう。
そんな悩みを、今回解決してあげたいと思っています。

その前に、タイヤウォーマーとはいったい何なの?と思っている人がいる かも知れないので、簡単に説明します。タイヤウォーマーとは、実車の レースでも使われていて、要はタイヤを温めて、タイヤのグリップを最大限 に引き出すための物です。ラジコンで実際に実用化を最初にしたメーカーは、 クロスです。クロスは、ラジコンのF-1全盛期に、F-1用タイヤウォーマーに いち早く着目し、市販に踏み切りました。当時のF-1は、スポンジタイヤを 使用してのレースが主で、このウォーマーを使うのは、タミヤ青山GP でキャップドタイヤを履かせた時ぐらいだったと思います。ツーリングカー も、今ほどブームではなかったし、ツーリング用タイヤの開発もゆっくり だったので、タイヤウォーマーの効力を痛感する機会がなかったような気 がします。当時は効力うんぬんよりも、見かけが実車のF-1みたいでかっこ いいとかで使用する人が多かったです。という事で、あまりタイヤウォー マーは陽の目を見なかったわけです。

しかし、昨今のツーリングカーブームもあって、またタイヤウォーマーが リバイバルしたわけです。一昨年のJMRCAのツーリングカー全日本の開催地 である川場村のコースは、昼と夜の気温差がとてもあり、気温が下がった ときに特にタイヤがグリップしなくて、多くの選手が悩んでいました。そこで 登場したのは、過去の遺物になりかけていたタイヤウォーマーです。Aメイン のトップドライバーの多くはそれを利用して、好成績をおさめていました。 それだけでかなりの宣伝になったんでしょう。たちまち他の選手にも広がり、 今や気温が下がった時の必需品になりつつあります。当時はウォーマーを出 しているメーカーはクロスぐらいだったので、クロスの在庫がなくなって、 なかなか手に入らなかったのですが、今ではHPI、イーグルなども加わり 種類も豊富になりました。

次に、正しい使い方を説明します。でも、これは僕の経験で一番正しいと思 われる使い方なので、一般的に正しいかどうかはちょっとわかりません。 今までタイヤウォーマーを愛用してきた人には、自分のやり方が1番だと言う 人もいるかもしれません。そう言う人は、是非これから説明することも参考に してみてください。また、タイヤウォーマーを持っていて、使い方がいまいち よくわからない人は、是非お試しください。

タイヤウォーマーは、文字通りタイヤを温めて、タイヤののベストの温度環境 を人工的に作り出すツールです。しかし、使い方を誤ると、逆効果になる可能 性があります。

それはどういうことかというと、使用するタイヤの特性を考 えなくてはならないのです。タイヤには、高温で威力を発揮するもの、低温で 威力を発揮するもの、また、その間の温度でと、いろんな特性を持った物があ ります。サーキットによって、ある程度定番のタイヤがあるんですが、絶対に これって言うタイヤはありません。それは、ゴムタイヤと言うものは、必ず 温度によってグリップが変わってしまうからです。タイヤの温度管理が必要に なるわけです。

走行していると、1周目と中盤と、最終ラップ付近では、ド ライビングフィールが違うことに気付いた人も多いかと思います。ウォーマー を使わないとき、ベストラップは必ず中盤の何周目かにマークします。すなわ ちそれは、走行によってタイヤが温まって、中盤くらいにそのタイヤにとって ベストの温度になったことを意味します。ということで、僕はこのベストラッ プが出た周回で車を止めて、すぐタイヤの温度を測ります。そして、タイヤ ウォーマーでスタート前に温めておく温度を、先ほど測った温度プラス3〜5 度まで温めます。この3〜5度というのは、車を止めてから温度を測りに行く 間に実際タイヤが下がる温度と、ウォーマーで温めた温度から、スタートでタ イヤが回転したときにタイヤが路面から奪われる温度を考慮した経験値です。 この温度設定の方法を是非お試しください。

また、実際のレースでは、スタート準備をしてから、実際にスタートするまで 時間がどれくらいかかるか読めないものです。こうした時、タイヤウォーマー の脱着が容易なものが良いでしょう。具体的には、HPIから出ている帯状のもので あれば、ボディーを被せていても簡単に取り外せ、スタート直前までウォーム アップできるでしょう。しかし、HPIのものは、その形状からわかる ように温まり難く、冷えやすいです。また、タイヤのショルダー部分まで しっかりと温められないといったデメリットもあります。

タイヤをきちんと めたかったら、袋状の物が良いです。特にクロスの新型のものは、熱線がまん べんなく敷き詰められているので、とても良く温まります。ウォーマーとして は、1番優れていると思います。しかし、とっても高価です。最初にたっぷり 温めて、スタートまでの時間をある程度予測しながら使うと良いでしょう。

先ほど、タイヤウォーマーを付けた時、反って逆効果になるかもしれないと 言ったのは、温めすぎによる、タイヤの熱ダレのことです。1度熱ダレを起こ すと、車はオーバーステアになり、安定して走れません。このような場合は、 気温や路面温度が高く、ウォーマーを必要としないか、ウォーマーで温めすぎ ているのです。ウォーマーで温めるのも程々にしないと、タイヤのおいしい所 を使えずに終わってしまう可能性もあるのです。

以下に、タイヤウォーマーを使用する条件についてまとめてみました。
@気温、路面温度が低く、1,2周目に極端にタイムが落ちる場合。
Aスタートでホイールスピンして、前に出ないようなとき。
B後半のタイヤの熱ダレが、激しくないとき。
このようなことを考慮して、やってみてください。ツーリングかは、タイヤで 70%以上は決ると言われています。タイヤに関してのノウハウが重要になっ てくるでしょう。タイヤとインナーの組み合わせによって、熱ダレし難くなっ たり、ウォーマーを使用したほうがもっと速く走れたり。ホイールに空いてい る穴数を多くすると、熱ダレが起きにくいなんて言うのもあります。そういっ たノウハウをいろんな経験をしながら身につけていってくださいね。必ずアド バンテージになると思います。では。

PS:タイヤの性能曲線をかくと、グリップそこそこのタイヤは広い温度領域を 持っています。しかし、グリップの良いタイヤになればなるほど、とんがった 温度領域の狭いタイヤになるわけです。レースではこの狭い領域をいかに使う かがカギになります。

(この項おわり)



このページは、タミヤRCカー専門サイト「RC_Car_Trend」が提供しています