posted on 1/25/1999
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RC Car Trend モーター研究室

<その4:TS020用スポーツチューンの謎?>

*** 04/04/2002付けで従来の見解を覆す大幅改訂を行いましたのでご注意ください! ***

今回は、99年1月11日のRC Car Trend掲示板に掲載された、マック福谷さんの書き込みを題材としました。

(以下、BBSアーカイブより転載)
題名:新(?)スポーツチューン 投稿日 : 99年1月11日<月>10時06分
はじめまして、愛知のマック福谷と申します。F1ばかりをかれこれ5年ほどやってます。 さて、最近発売されたTS020なんですが、付属のスポーツチューン、 新型になってませんか? ピニオンを取り付ける部分が短いんです(右下の写真参照)。

で、さっそく回転数計ってみたところ結構回転があがる。 でも使用してみると「何じゃこりゃ〜」って言うくらいにトルク感がない。 やっぱりゴムタイヤ用の味付けに変更されているんでしょうか? "モーター研究室"のほうで、ぜひ研究して欲しいです。

***

これは気が付かなかった、面白そうだ、ということで、調べてみました。

まずは外観調査。確かに、新型スポチュン(写真中央)はシャフトが短い。 ・・・といいますか、RS-540SHと同じ長さになりました。これに対し、従来の スポチュンはシャフトが長かったのですが、これは、 「モーター研究室・その2」のスポチュンの項でも触れているとおり、 ローター部品を過去の「RS540ブラック」シリーズから継承していたため?と推察されます。 ここにきてようやく、過去のロットが掃けたか何かの理由で、現行RS-540SHと シャフト部品の共通化が実現したのではないでしょうか。あくまでも、マブチ内部の 生産面での都合によるもので、性能に関わる部分ではないでしょう。

それ以上に注目されるのは、ローターのバランス取りの方法変更のほうでしょう。

これは、今回改めて020同梱モーターを眺めていて気づきました。従来、コアのえぐり取りで 対応していたのが、トリニティなどでも近年採用された (実はジョンソンモーターでは以前からやっていたりする) 「エポキシパテ練り込み式」に改められています。(右下写真参照)。これにより、 ローターコアが発する磁力線がキレイになり、回転がスムーズになる効果が期待できます。 もっとも、数字にあからさまに出るほどの改善効果につながるとは思えないレベルの 小改良ではあるのですが・・・。

<トルクアップ?>
ともあれ、ベンチにかけてみました。下のグラフをご覧ください。

比較対象の旧スポチュンは、できる限り新品に近いものを選んだのですが、 完全に「下ろしたて」のコンディションを確保できているわけではなく、未使用ながら、 多少多めにナラシが入ってしまっているので、 そのへんを割り引いてデータを評価する必要があります。

このデータを見る限り、「旧型」のほうが、多少余計にナラシが入っている分、回転は上まで伸びていますが、 どっこい、トルクを見ると、新型のほうが圧倒的に上回っています! この結果、出力的にも最大で1割も新型のほうが 良い数字が出ています。

実は、このデータを作成した当初は、経年変化による磁石の劣化かなあ、と思っていたので 「ナラシで出る誤差の範囲内!」と判定していたのですが、<その20>で明らかになったとおり、 「4〜5年の経年変化で磁力が目に見えて落ちる」という可能性はほとんどなさそう、という結果が得られたので、 どうやら当ページの結果は、経年変化やナラシの差ではなく、モーターそのものの性能差ではないか?と考えるようになりました。

この結果、当ページの見解を大幅に見直し、従来の結論とは全く逆の「新型のほうがいい!」という結論を導きました。 改訂前のコメントをお読みいただいた方には申し訳ありませんが、 「反証が出ればその事実をを取り込んで定説を見直す」というのが科学の基本ですので、 「宗旨替え」については平にご容赦願いたいと思います。


(実線はTS020キット同梱の新型スポーツチューン、点線は旧タイプ)

<簡単なナラシでもこんなに違う!>
ところで、新品のストックモーターの場合、 ナラシの状況次第で同じモーターでも、下のグラフにみられるとおり、別のモーターと 言っていいくらいの差があります(上の測定結果は、最高回転数などの測定値が安定する まで、5分程度の空回しでナラシてあります)。ただし、ナラシをいくらやってもほとんど変わらない モーター固有の性能があります。それは「トルク」です。 トルクは、電流・電圧が固定されている条件では、単純に、「永久磁石の磁力と巻き線に流れる最大電流」 で最大値が決定されてしまうからです。「ブラシのコンディション」が測定のバラツキのほとんど唯一の要素になりますが、 Pro Masterでは、「回転数ゼロ時」の電流値の実測は行わず、回転途中の計測データから回帰分析で「回転数ゼロ」の値を求めている ので、何度回してもトルクの値はほとんど変わりません。

もちろん、モーターの種類によっては、ブラシのアタリが出るまで トルクが低めに出るモーターも結構あります。タミヤ・スーパーストック23T・タイプRなどはその典型例でしょう。 しかし、スポチュンの場合は、もともとブラシがソフトですぐアタリが出るうえ、 摩滅後もブラシの進角がほとんど変わらないため、ナラシを必要以上に入れても、 トルクが目立って増える、ということはないようです。

ちなみに、RCTでは、2001年以降、3.6Vのニッカド電源による5分間の無負荷通電運転をナラシの基準にしています。 スポチュンではこの程度のナラシで十分なようですが、ノーマルブラシの(セレートでない)23Tモーターなどは もう少し長めに回さないと、十分なブラシのアタリが得られませんので注意しましょう。

また、ジョンソンや540は、ブラシの摩滅に伴うブラシスプリング圧と進角の変化で かなりプロファイルが変わります。540およびジョンソンについては、 まだ決定的なデータが得られていないので、どの程度のナラシ条件がベストなのかは判断できていません。ごめんなさい。


(実線は5分程度の簡単なナラシ済みの新型スポチュン、点線はナラシ前(初動時)の同一モーター)

ついでなんですが、新型スポチュンを典型的なジョンソンモーターのスペックと比較してみました。


(実線は新型スポチュン、点線はジョンソン)

こちらは、新型スポチュンとダイナラン・レーシングストックの比較です。


(実線は新型スポチュン、点線はダイナランストック)

モーターの検証は、自分だけではなかなか確証がつかめないものです。これはお互いさまのこと。
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