RC Car Trend Vol.6──────────────────── 98/07/27(発行部数:231部)

〜 Contents 〜
1.フェラーリ伊藤の雑記帳:M-03インプレ
2.TOPな人々(その3)
3.Q&Aコーナー:ツーリングカーのインナーについて
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1.フェラーリ伊藤の雑記帳

みなさんこんにちは。

私は最近、都合によりF1を走らせることができない日々が続き、代わりにツーリング系にかける時間が増えています。 そんなわけで今回も、話題の中心は遂に発売なったM-03になってしまいます。 F1ファンの方すみません。ちなみに、M-03の組み立ての顛末については、別途 こちら にて紹介しております。どうぞご一読ください。

さて、当初3週間計画で組み立てるつもりだったM-03ですが、結局、発売後最初の週末にめでたく組み上げ、 連休明けの火曜日、うきうきしながら勤務地に近い晴海の 「東京レジャーランド」に持ち込みました。 ラジマガ8月号に紹介されていた、あのコースです。

行ってみると、コースは考えていたよりも横に長いものでした。奥行きはROXとほぼ同等ですが、横幅は1.5倍くらいある。ただし、バックストレートの幅が異様に狭い。 ツーリングカー3台分くらいの幅(1メートルもない)しかありません。したがって、 「人間トリム」ができない人には、かなりツラそうです。540あたりで流すならともかく、 GT1の予選モードで走るには、まずクルマのニュートラルをきちんど出すことが大前提になります。 もちろん、トリムの幅設定もできるだけ細かくしないといけません。プロポのデフォルト設定のまま、 トリムの刻みが0.5ポイントとかのままでは、ハナから直進はおぼつきません。 トリムの刻み値が変更できない廉価なプロポだと、コースを走ること自体がかなり ツラくなりそうです。

そんな問題はありますが、カーペット敷きのため、グリップ自体はかなり良好です。 興味深かった点は、同じカーペット路面でありながら、ROXと当コースでは、 タイヤのセッティングがまるで反対になったこと。ROXの(というより、タミヤの) カーペットは、基本的にトレッドパターンの引っ掛かりでグリップしており、 ブロックが減るに従ってグリップレベルが下がるので、同じコンパウンドなら スリックが一番グリップしない、という路面です。また、柔らかいコンパウンドの ほうがグリップします。少なくともMシャーシでは。しかし、「東京レジャーランド」では、 逆にスリック(摩耗してブロックがなくなったやつ)が一番食いました。 コンパウンド的にも、SグリップよりMグリップの方が若干良い。妙な話ですが、 固めのゴムの方がグリップする、ということでしょうか。当日は持っていませんでしたが、 ひょっとすると、ノーマルのラジアルが最もグリップするかも知れませんね。 もっとも、Mグリップでも十分片輪走行しまくるくらい、グリップしてましたので、 これ以上は不要かも知れませんが・・・。

さて、肝心のM-03の感想ですが、設計の狙いはおおよそ実現されている感じがしました。 何よりも感激なのは、「まっすぐ走る!」ということ。情けない感動ですが、 これがMシャーシユーザーの悲願(?)だったのですから、それだけでもM-03にチェンジ する意味はありそうです。安いからそう負担にもならんでしょう。 あと、ギヤ鳴りが静かなことも、盲点ですが私は気に入りました。 このほか、タイヤが大きくなったので、挙動の安定感が増しました。 私は、ストレートエンドからの突っ込みで、再三、ハイサイドを起こしましたが、 転倒することは少なく、たいていは片輪走行から再び通常走行に戻ることができました。 慣れた後は、意識的に曲芸走行をやっていたくらいです。ただし、これはクルマの車高を あらかじめ極端に下げていたせいでもあります。 既に、「ノーマルの車高では、転倒しまくってお話にならない」という報告が上がって きていますから、M-03を購入された方は、まず、車高を5ミリ程度まで下げてからサーキットへ 向かわれることをお勧めします。

反面、心配していた冷却の問題は、いかんともしがたいものがあります。 何しろ、モーターに風が当たらず、熱がこもりますから。専用ヒートシンクが8/6発送でリリースされますが、 モーターカンの熱を取り付けビスだけで逃がす、というのは、TA-01/02用ヒートシンク以来サイテーの出来栄え (笑)。設計段階でしか出来ない「仕掛け」のかけらも感じられません。 タミヤさん、シャシーとセットで企画していたのなら、もっと知恵を絞ってくださいよ! サーボとシャシーフレームの間にヒートシンクの顔を出すとか、 逆にシャシー裏面(接地面)に出すとか。

その他の問題点としては、キャンバー変化が少な過ぎることが挙げられます。 車高を下げても、ネガティブキャンバーがほんの少ししか付かない。 あれでは、ハイサイドが起こりやすい。OPTでターンバックルのアッパーアームが欲しいところです。 OPTと言えば、カーボン樹脂製のシャシーフレームなんかを発売してもらえると嬉しいのですがゥB

車高の話が出たところでついでに言わせてもらうと、 60Dタイヤを標準にしておきながら、車高設定がやたら高いというのは、どういうこと? 「オンロード専用」を意識したTA-03を作った後の仕事とは到底思えない。 オプション指定から外れているCVAスーパーミニをつけて、スペーサーも6mmも入れて、 ようやく何とか格好がつきますが、今度はアップライトがボディマウントと干渉する。 これはM-01/02でもあったこと。どうして改善されないの? ・・・こういった問題点はすべて、タミヤの開発スタッフがまともなレースに出ることを想定して マシンセッティングすれば、直ちに出てくるはずの問題ばかり。タミヤの歴史をふり返れば、 別に今になって始まった話でもない、と軽く流してもいいのですが、あえて怒りたい!

それはそうと、以前にかなり書き立てていた「重心」の話については、とりあえずあまり M-01との違いは感じられません。やはり、タイヤの問題のほうが大きいようです。それと、 今になって気づいたのですが、モーターが後ろに下がったことは、メリットもあります。 モーターが重心に近づいたことで、モーターの反動トルクによるシャシー挙動への悪影響が 緩和されているのです。つまり、ラフなアクセル操作をしても、姿勢変化がマイルドだ、ということ。 シャシー重量がツーリングカーより20%も軽いだけに、反動トルクの影響はバカになりません。 ましてFFですから、もともとステアリングに対するトルクの影響は大きいですし。

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2.TOPな人々(その3)by Y.Mishima

このコーナーは、渋谷トップサーキットを彩る様々な人たちを、 筆者の独断と偏見により描き出すドキュメントです。

――― 山本 雅樹(やまもと まさき) ―――

最近TOPではF1バトルが盛り上がっています。このツーリングブームに何を今更とおっしゃらずに、 一度体験してみてください。今回はそんなF1のスペシャリスト・山本君の登場です。

山本君のTOPでのニックネームは「東大君」なんですが、はじめはただのニックネームかなと思いましたが、 冗談ではなく元・東大生でした。どうも私の中では東大生というのは やっぱりただの思い込みにすぎません。もちろん知的な顔をしていますが、話してみるとけっこう 楽しい人だったりします。

エキスパートの方の車って見るだけでも参考になりますが、山本君の車は彼の性格を反映してか 見事な出来映えです。いつ見てもきれいなシャーシに独特のメカ積み、細部にまでこだわった作りは 常連の間でも有名で、最近ではそれをまるまるコピーするマニアまで出てきました。 「ああすれば出来るけど普通そこまでやらないよ」ということを普通にやってしまうのが 山本君のすごいところです。知らない人が彼の車を見たら「アンプはどこ?」とか「受信機無いの?」 なんて、あまりにシンプルなシャーシに驚くでしょうね。

セッティングに関してもなかなか鋭い面を持っています。最近TOPで流行っているフロントに ブチルミディアムを履くセットも山本君から始まりました。おかげでしばらくの間TOPの ショップからブチルミディアムが姿を消す状態が続きました。特にオープンクラスでは 彼の影響を受けている人がたくさんいて、私もある意味その一人です。 わりとベーシックな車に色々アイデアが詰まっていて、しかもそれを秘密にしない (もっともエキスパートにとっては当たり前なのかな?) ので参考になることがたくさんあります。

TOPのF1シリーズポイントは、第5戦終了時点で前回ご紹介した北澤君をおさえて 堂々の第1位。優勝3回、2位2回と完璧な展開を見せています。エキスパートF1のレースは 大抵最後に行われますのでほとんど観戦していますが、山本君の走りっぷりは 見事としか言いようがありません。ほとんどラインを乱さず、後ろの追撃にもあせらず、 後続を引き離したと思えば燃費走行と憎いくらいに落ち着いているのですから。 第4戦の決勝中盤に1コーナー手前で突然停止しギャラリー一同驚いたのですが、 何事も無かったように再び走り出しました。不思議に思い後で話を聞いてみると 「あのラインでコーナーに入ると当たって車壊すから止まったんだ」ですと。 あーあ、自分のバタバタのレースが情けない! 私もあんな風に冷静にドライブできたらなー・・・。 山本教にでも入信したいくらいです。

はじめにF1のスペシャリストと書きましたが、ツーリングカーだって持っています。 真っ赤なポルシェ911GT1(編注:96年10月にフェラーリ伊藤がニューヨークへ転勤してTOPから消え、 「そういえば最近、赤いクルマがいないよなー」ということで、ほんの出来心から赤に塗ったんだそうな。 やはり赤は目立ちますからね。まさか、転勤してからわずか1年余りで元祖が舞い戻ってくるとは 思わないですしね)。私は数ヶ月前に一度見たきりなのでどんな走り方なのかまったく知りません。 ちょっと見てみたい気もするのですが山本君=F1というイメージが焼き付いてしまって想像すら出来ません。

タミヤのパーツで3mmアルミナットというのがありますよね、あのナットのねじ穴、 たまに真ん中に開いてないのがあるって知ってましたか? 山本君ってばそんなところにまで気を使って パーツを買っています。そんなのタイムに関係無いとほとんどの人は思うでしょうが、 それが彼の彼らしいところです。エキスパートのトップ争いをするには、あの位こだわらないと・・・ なんてガラにも無く考えてしまう今日この頃です。

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3.Q&Aコーナー

読者の金住冨生(かなずみ とみお)さんからお便りをいただきました。 ご本人の承諾を得て、ここにご紹介します。

*** ご質問 ***

始めまして伊藤さん。 金住(かなずみ)と申します。

このようなRCに関するメールマガジンが発行される事をず−っと待っていて 「やったー」って感じです。(;;)(喜)

あ、自己紹介をしなくては。

私は31才、会社員でRCを始めたのは今年に入ってからです。
友人の誘いでちょっと触ったのがきっかけで、今じゃすっかりRCバカ
RCは前々から興味があり(自分が小学校、中学校時代にRCがブ−ムだったころから) 触ってみたかったのですが、回りにRCをやっている人が居なくて離れていました。 最近友人が始めた事と、社会人であるため経済的に余裕がある事で始めました。

自分の車はタミヤ TA-03FとTA-03Rです。タミヤは小さい自分の頃からお世話になっているので、 なんとなく買ってしまった次第です。

TA-03Fは好きなランエボがたまたまTA-03Fだったと言う事で、
TA-03Rはちょっと興味があったので購入しました。

最初のころは、なかなかセッティングが上手く行かず、コ−ナーで車は転がるし、 ハンドルをきっても曲がらないし、また逆に切れすぎてクルクル君になるし、 といったぐわいに何がなんだか???、って感じでした。

最近は、友人の指導で何とか落ち着いてきたのですが、まだまだドアンダーで いま、四苦八苦しながら調整している所です。

もし、良かったらセティングのワンポイントなど書いて頂けないでしょうか、 アンダーの時はどのようにしたら良いか、オーバーの時はどのようにしたら良いかなど、 (全部自分に都合の良い内容ですね!(^^;))

セッティングに関しては、皆さんノウハウの様なので、なかなか教えてて頂けないため、 ビギナーの私としては、この様なアドバイスを頂きたいと思っております。

*** お答え ***

私は基本的にGT-1仕様の決勝用と予選用の中間を取ったような仕様(ダイナラン・ スーパーツーリングで進角4目盛、走行時間5分程度)でセッティングを煮詰めていますので、 以下の話はすべてこの仕様を基準にしたお話です。もし13ターンを使うようであれば、 もっとアンダーを出さないと挙動が神経質になるでしょうし、逆にパワーが少なければ、 フロントのグリップを上げてやらないと駄目でしょう。

03Rのインナーに関して、私の推奨セットはフロントがソフト(青)モールドインナー、 リヤがインナーフォームです。もちろん、コンパウンドは前後同じにしてくださいね。 でないと、走りはじめとその後で、タイヤの温度上昇につれてグリップバランスが変わりますから。

ところで、ご質問では、「03Rでアンダー」とのことですが、曲がるようにするのは簡単です。 フロントタイヤのグリップを上げてやれば良いだけの話ですから。 ただし、インナーが前後ともパワーチューブ(タミヤのインナーフォームでも同じこと)で アンダーが出ているのなら、根本的に何かがおかしい。モーターにもよりますが、 普通は前後同じタイヤだと弱オーバーになるはずです。モーターによる、というのは、 540などではアンダーパワーのため前後同じインナーでも良いかもしれませんが、 パワーが上がるに従って、リヤがブレイクしやすくなるので、 フロントを逃がしてやる必要が出てくるからです。

シャシーが03Fの場合は、メカの積みかたにもよります。 メカを後ろ寄りに積んでいる人は、前後ともインナーフォーム (つまり、同じインナー、ということ)を使用できるケースが多いようです。 これは、03Fはフロントの慣性モーメントが大きく、コーナーの突っ込みで アンダーステアが出やすいため。その分、Fタイヤのグリップを上げてやる 必要があるためです。

ツーリングカーのセッティングは、タイヤで決まってしまうといっても 過言ではないほどタイヤの重要性は高いです。試行錯誤のなかから学んでいって欲しいと思います。

ところで、ご質問のなかで気になったのでコメントさせていただきますが、 見た目に速くても、「ノウハウだから教えない」、という人がいたとしたら、まず ニセモノだと思って間違いありません。単に面倒くさいという理由でなければ、 本当に腕に自信のあるひとは、テクニカルなノウハウを隠したりしません。 「腕」に自信があるわけですから。同じ車だったらオレの方が速いんだぞと。 説明を避ける人は、レギュレーション違反といった後ろめたいことをしているか、 あるいは体系だったまっとうな知識がないかのどちらかです。

ただ、私たちが忘れてはならないのは、「ノウハウ」というのは、 その人が一生懸命考えたから出てきたもの。特許みたいなものです。 それを手に入れたいのであれば、それなりのアイデアを相手にも提供するべきでしょう。 企業でいうところのクロスライセンスですね。 そのためには、自分自身も日頃からアイデアを練り、それを他の人にぶつけてみることです。 そうすることで、相手に何かヒントが与えられれば、 結果的に自分がベターなノウハウを得るにしても、気分が違うでしょう? まして、 他人より、もっといいアイデアがひねり出せるようになれば、もう言うことなしですよね!