RC Car Trend 創刊号 ──────────────────── 98/05/31(発行部数:103部)

〜 Contents 〜
1.創刊のごあいさつ
2.シブヤトップサーキット(TOP)について
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1.創刊のごあいさつ

はじめまして。編集長の伊藤です。

RCカー愛好者でパソコンを持っている方は少なくないはずですが、いわゆる エキスパート(EXP)レベルの人がホームページを公開しているケースは希で す。私が活動拠点としている渋谷トップサーキットでも、パソコンを持ってる 常連は、ほんのひと握りです。チャットやメール交換といった初歩的な情報交 換は、ごく限られた範囲でしか行われていません。NiftyserveやMSNのフォ ーラムにしても、利用者は会員に限られ、利用度はイマイチです。

考えてみると、EXPというのは一般に、(1)若年で、大抵はビンボーなため、 高額なパソコンを買う金はなく、あったらあったでパーツや備品を買ってしま う、(2)本当に重要な情報(レギュレーションに抵触するモディファイとか) は人に教えない、(3)単にヒマがない、(4)ワークスになると、立場上、言える ことと言えないことが出てくる、といったことがあり、そもそも、ネットワー ク社会になかなか進出してこない人たちなのです。

私自身は、自分で言うのもなんですが「中の上」レベルのドライバーなので、 極めて自由な身です。メーカーの世話をする気はさらさらないのですが、RC カーがもっとポピュラーな存在になったり、速い人が増えるのは楽しいので、 自分の持っている情報を公開する方法をあれこれ模索していました。そのなか で、手軽に、タイムリーに情報を発信するには、メールマガジンがぴったりと 考え、本誌を創刊したわけです。ただ、文字情報だけでは限界がありますから、 そのうちホームページも立ち上げて、写真、図表、音声やビデオを公開したい と考えています。本誌のバックナンバー管理の問題もありますしね。

前置きが長くなりましたが、最初ですからまず自己紹介させてください。私は、 東京都調布市在住、31歳の会社員です。結婚4年目、もうすぐ2歳になる娘 持ちで、そのため今年はレースにほとんど出られません(笑)。

だいたい、私と同年代の方は、小学生から高校生くらいの時期に第1次電動 RCカーブームの洗礼を受けた世代です。当時はカネ不足に悩まされ、贅沢な 体制でレースに臨むオトナをうらやましそうに眺めていましたが、今では自分 もオトナ、自由になるカネができて、当時のウップンを晴らしている連中が多 いですよね。TVの「タミヤRCカーGP」で見かける、「30代前半でラジコン歴 3年程度」という人は大抵そんな感じです。

私もご他聞にもれず、 タミヤ の第1号RCカー、ポルシェ934RSRからいろいろ やってきましたが、バギーブームの始まりとほぼ同時期に大学受験、就職の波 に流され、気がついたときにはバギーはとっくに終わっていました(バギーは 手入れが大変なので、どっちみちハマらなかったとは思いますけど)。今、所 有しているのは、15年前に友人から中古で買ったバギーチャンプと、昨年ジ ャンクパーツから組んだダートスラッシャーですから、完全に「中」が抜け落 ちているわけです。

さて、RCの楽しみ方にも硬派と軟派がありますが、私の場合、できる限り手 抜きをする、という意味では軟派(お気楽エンジョイ派)と言っていいでしょ う。ソフトアタッシェケースひとつにクルマとプロポとバッテリー6本とタイ ヤ少々を詰め込んで、工具はドライバーとペンチ程度(クリーナーや充電器は なし)しか持たず、スーツ姿で夜のトップサーキットに現れ、まるでQDのよ うに、到着するやいなやコミュドロップも差さずにやおらF1やGT1ツーリン グを走らせるのは、関東広しといえども私くらいのもんだと自負してます。

ただし、だからといって、漠然と走っているわけではありません。持ち物が少 ないのは、裏を返せば、テスト内容(=クルマをいじる個所)があらかじめ決 まっているうえ、派手にクラッシュしないからです。時にはサーボセーバーな んて珍しいものを壊し、ショップにパーツ在庫がなかったため、F1のキット 丸ごと買ったこともありますけど。

そもそも、私がわざわざサーキットに赴くのは、「レースに勝つ」という目的 があるからです。レースに勝つという行為を通じて、達成感や周囲の尊敬を得 たい。そのレースがビッグイベントであればそれだけ、達成感も大きくなる。

このように真正面から書いてしまうと、フツーの人は「何て無駄なことにエネ ルギーを費やしてるんだ、このバカは」と思われることでしょう。でも、レー スに限らず、スポーツでもコンテストでも将棋でも受験でも、およそ競争とい うのはそういうものではないでしょうか? 私の場合は、その対象がRCだった だけの話です。それは、今までいろいろ手がけてきた競技のなかでも、一番 「イケそう」だったからに過ぎません。もちろん、まだまだ登る階段は多いの ですが、自分の技術と精神力が着実に進歩し続けている限り、やめる気は起こ りません。ヒマとカネと自家用車があればJMRCAにも殴り込みたいですが、そ の前に制覇すべきはタミヤ全日本ですよね、やっぱり。

そんなわけで、この雑誌には、時折ディープな内容が出てくると思いますが、 その点はご容赦ください。先述のとおり、私はあくまでも中の上レベルのドラ イバーですから、私よりも「感受性=セッティング能力」の高いドライバーは たくさんいます。でも、そういうのはどこかのメーカーの息がかかっているよ うな、JMRCAで上位50位に入ってくるような人であって、タミヤレースに出 ている大多数の方には、私が書く程度の話でも、役に立つ情報ががいっぱいあ るはずです。特に地方の方にとっては、競争の激しい関東地域からの最新情報 は貴重でしょう。また、いまや電動RCカーも20年以上の歴史になってしまい ました。時にはレトロな話題を掘り起こして、RC歴の若い方々への語り部と なるのもいいかなと思います。

驚いたことに、 「ウィークリーまぐまぐ」 に掲載されてわずか48時間足らずの 間に、100名を超す読者のご登録をいただきました。RCに興味ある方って、意 外に多いのですね。ご支援のほど、よろしくお願いします。

2.シブヤトップサーキット(TOP)について

TOPは、 田宮模型 のバックアップにより、92年夏に東京都渋谷の駅ビル(東急 百貨店東横店)屋上にオープンした、全長150メートル規模の本格的RCカー コースです。オープン当初は、「鈴木亜久利の監修」という、いかにも怪しい キャッチ(亜久利さん自身は青山住まいなこともあって非常に協力的ですが) で関心を煽ったりしていましたが、今で は完全に自然体です。そんなこととは関係なく、歴代のタミヤ全日本F1チャ ンピオンである海野君、山口君、北澤君といったそうそうたる面々が、このサ ーキットを舞台に幾度となく見ごたえのあるバトルを繰り広げてきました。常 連の中にはタミヤ全日本関東代表の経験者も多く、ここで開催される全日本の 予選レースは、実質的なタミヤ全日本チャンピオンを決める場となっている観 さえあります。本戦よりも個々のタイム差が少なく、競争が激しいからです。


TOPのスタッフ

私は、TOPのローカルレースでは、肩身の狭い思いをしながらこういった「す ごい人々」に混じって走るのが嫌で、96年夏にアメリカへの転勤が決まるま では格下のオープンクラスでのびのびやっていたのですが、ラジマガに「タミヤGP全米予選で優勝しました」 とレポートし、ハク(?)がついてしまった今では、 さすがにEXPクラスで出ないとまずい雰囲気で困っています。とりあえず、家 族サービスで忙しいのを「逃げ口上」としていますが。
タミヤ全米選手権[TCS]の リザルトは こちらこちら…私の名前はRace#39[地区予選]のF-1/Indyクラスにあります

TOPに速いドライバーが集まる理由は、絶好の立地に加え、コースの広さとグ リップの良さにあります。消防法の関係で屋根がないのが唯一最大の難点です が。路面は、細かい石粒を混ぜた塗料という、特殊なもの。今のタミヤサーキ ットの路面も、TOPからのパクりです。仕上がりはやや異なってますけどね。

この路面、オープン当初はウレタンチップを混ぜた塗装だったのですが、混ぜ 物が少なくて、ものの1年でツルツルになってしまったうえ、朝昼晩でベスト なタイヤが変わるといった神経質な路面だったので、確か93年の終わりに、 大粒の砂を混ぜたものに塗 り直したのです。おかげでカーペットのように「何でも食うけど鬼のようにタ イヤが減る」路面になりました。夏には、1パックでブチルスポンジでさえ1 ミリ以上減りました。スーパースリックも10パックで終わってました。もっ と笑えるのはF1のキットに付いているノーマルタイヤ。これ、意外なことに 真夏だったらブチルタイヤと変わらないくらい食ってくれるのだけど、1パッ クで3ミリも減ったのです。こうなるとギヤ比なんて???ですね。

今では、砂粒もかなり取れてしまい、タイヤの減りは昔ほどではありませんが、 また当初のような昼と夜でタイヤが変わる路面になりつつあるようです。去年 までは、同じラバーならスリックよりパターン付きのラジアルの方が食ってい たのですが、今ではスリックの方が食っています。スポンジタイヤも、F1の リヤには、川田・ロングライフのような柔らかいものより、ブチルソフトのよ うな多少コシのあるタイヤの方が明らかにいいです。オープン当初の路面では、 もっと固いイーグルのシルバーが良かったのですが、まだ今の路面では試して いません。そんなもん、今どこにも売ってないし…。え、名古屋にはあるっ て?(確かイーグル模型の製品リストにはまだ…)

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どうも創刊号というのは、力が入ってしまって、話が長くなってしまいますね。 今回はこのへんでおしまい。次回からは連載モノ、タミヤ新製品レポートなど を始める予定ですので、お楽しみに!