posted on 10/23/2007
タミヤRC製品・即買いカタログ
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RC Car Trend モーター研究室

<その51:亜鉛メッキ仕様マブチ540SHに迫る>



<性能は違うのか?>

それは2006年春のことでした。3月29日発送のM-03M「スズキスイフト・スーパー1600」を早速ゲットし、 箱を開け、ビニール袋越しに同梱モーターをチラリと見た時のこと。

最初の反応は、「あ〜、また62227ジョンソンかぁ〜」とガッカリでした。 ところがよく見ると、ジョンソン特有のロット記号がありません。「あれ〜、打刻マシンが変わったのかな〜」なんて 思いながらもうちょっと良く見ると、あれれ、この亜鉛メッキ缶のモーター、 マブチ540SHって書いてあるじゃん、と いうことに気付いたのです。
うわ〜、またややこしいことにななってきた・・・(苦笑)。

2002年に「62227ジョンソン」が登場するまで、1980年代後半以降のタミヤキット同梱540は、マブチRS-540SHないしセカンドソース品(安定供給を確保するための代替品)としての 62200ジョンソンをランダムに同梱するスタイルが標準でした。いずれもニッケルメッキ 缶仕上げですが、タミヤの仕入れ単価は推定200円前後、という程度のモノです(発注単位がデカいですから)。

もともとRCカー用の540SHは、マブチが模型店向けに単品売りのパッケージもラインアップ している関係で、「見た目」もそれなりに重視され、工業部品用の540と比べてハイグレードな外装仕上げでした。 それでも6V仕様の540Sの頃は、プレスの仕上がりも今のように滑らかではなかったですし、メッキにしても、 エンドベルが白かったごく初期の頃はまだ缶の 仕上げが安っぽくて、現在、ターンバックルシャフト
レーシングマスターシリーズ・ポルシェ956付属のRS-540S
<6V仕様品> 等に添付されている標準工具のスパナと同じ色味の 光沢クロメート処理(なのか?)に見える亜鉛メッキ仕上げ でした。その後、1980年頃から黒いエンドベル仕様に改良されたときに、 缶のメッキも右写真の「ポルシェ956」付属モーターのようなニッケルメッキ仕上げに変わったようです (当時はあんまり意識してませんでしたけど)。 そして、80年代末から90年代初めの540SHへの切り替えに伴って新たなプレス技術が導入され、 表面が一段と滑らかになって、ニッケルメッキがますます映えるようになった、というわけです。

ただ、メーカーの立場から考えると、「ニッケルメッキ」というのは見方によっては「過剰仕上げ」なわけです。 確かに美観はグッドですが、昔と違って今はoptモーターがわんさか売られている時代、
「どうせすぐにoptのモーターに交換されてしまうようなモノに美観を
従来のマブチRS-540SH
(ラベルの型番文字が黒いのは模型メーカー向け卸売(OEM)用、赤いものは小売用。
小売用はモーターコードがシリコンコードにグレードアップされていますが、中身は同じです) 追求してどうすんの?」というツッコミが入るのは道理です。 もっとうがった見方をすれば、標準モーターがあまりにカッコ良いと、 ユーザーがそれに満足してしまってoptのモーターをなかなか買ってくれない(特に初心者は)、という見方も あるかも知れません。optを買ってもらう動機付け、という観点からは、 「キット標準品はショボくないといけない」という逆説的な考え方すら成立するようになったわけです。

まぁソコまでえげつない話じゃなくても、 「性能が問題なのであって見た目はカンケーない、安いほうが吉」というスタンスに立てば、 ここにコストカットの余地が生まれます。また、要求性能を多少落として構わないなら、缶の仕上げ以外の部分でも コストダウンの余地があり得ます。そういう観点から、トイRCに近い属性のXBモデルや入門
用のTT-01に導入されたのが、後処理なしの 溶融亜鉛メッキ仕様

62227ジョンソン (後処理されてないので指紋が付くとそこから錆びちゃう代わりに一番安い)、かつ簡易カシメ処理を導入して 生産性を追及した巻き線仕様の「62227ジョンソン」だったのでしょう。

では今回の「亜鉛メッキ缶の540SH」はドウなんでしょう? 単純に62227ジョンソンの「マブチ版」 なんでしょうか?

そう思って仔細に観察してみると、どうも62227ジョンソンのようなあからさまな中身の違いは見当たらず、 従来の540SHと変わりません。確かにエンドベルも含めて外装の仕上げだけは思いっきりグレードダウンしていますが (と言っても缶のメッキにもちゃんと最低限の後処理がされているようで、 62227ジョンソンみたいに「指紋で錆びる」と
いった風ではないようです)
、それだけです。ブラシやローターには
グレードダウンは認められません。もしかしたら、 「62227ジョンソンと従来のニッケルメッキ仕様の540SHの間を取る」ような位置づけで、 単に外装をコストダウンしただけなのかも知れません。


<計測方法>

ともあれ、ここまではあくまでも外観調査上での判断。結論は実測すればすぐ分かります。 今回の計測は「その48」の計測と並行して行いました。 ですから計測条件はその48と同じ、 温度範囲は25度±2度(公称値)ながら、実際には初夏ということで26.0〜27.0度と高めの条件でした。 サンプルは06年4月購入のスズキスイフト付属品(540SH-ZN-1)と07年2月購入のマツダRX-7付属品(540SH-ZN-2)
の2個。540タイプモーターは個体差が大きめなので、本当は5個以上サンプルがあったほうが計測精度は高まるんですが、 ま、これからは放っておいてもサンプル数は増えていくでしょうから、とりあえず、ということで・・・。 計測は7.2V基準で5回ずつ延べ10回、5V基準は時間の都合で3回ずつ延べ6回行いました。ということは偶数個の データ数になるので、厳密な「真ん中」のデータが取れないわけですが、便宜的に「上から5番目/3番目」のデータを 代表値としてグラフ用のデータに選出しています。

そうそう、540系で問題になりがちな「ナラシ」については、特に意図したチューニング的なことは行っていません。 新品時の「素」の状態を知るにはむしろ邪魔ですし、 ブラシに逆進角が付いているマブチ540SHは正転方向で使う限り 使い込むほどダメになっていく
(厳密には回転数はさほど変わりませんがトルク・出力が減っていく)のが「お約束」ですから。 普通は、540SHのチューニングをムリに考えるよりは、optで箱売りされてる62200ジョンソンを素直に 買ったほうが得策なので、あまり関心が高い問題ではないだろうと思うのですが、もし気になる方がいたら、 「その33」で取り上げていますのでご参照ください。

ただ、およそブラシモーターというのはどれもそうですが、 ド新品状態から回し始めると、ブラシに最低限のアタリが出るまでは、計測するたびに結果は一時的にどんどん良くなっていってしまいます。 ですから、本試験に入る前に、ド新品の状態から 何度かテスト計測を行い、計測値が安定するまで事実上のナラシ運転を実施しています。今回は、平均3V程度で 5分程度のカラ回しをしたのと同等程度の
テスト運転を行ったところで、概ね計測値が安定しました。 そこからしばらくモーターを室温まで冷ます時間をおいて本試験を開始し、テストを2〜3回連続すると ローターやコミュテーターの温度上昇で計測データが悪化するので、温度が室温程度に下がるまで待ち、再びテスト再開、 というのを数回繰り返して所期のデータを得ました。このようなプロセスは毎回のことですが、 出力レベルの低い540系では、温度の影響が特に敏感に計測結果に跳ね返るので、 交換式ブラシタイプのモーターを計測するときの何倍も気を遣いました。



<計測結果>

(表1:生データ<出力の大きい順>)

通常、製造から日が浅くコミュテーターの「鮮度」が高い(=コミュの酸化が進んでいない)ほうが良いデータを得やすい(=良く回る)、 というのが540系の「常識」なのですが、今回は古いほうの個体のほうが性能が良い結果になりました。こういうのを「当たり」と 言えばそうなのかも知れません。しょせん
62200ジョンソン に比べれば出力、回転数ともダメダメな性能レベルなんですが・・・。



<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)


参考までに、5.0Vでのデータは以下のとおりです。
標準540SHは7.2Vでしか計測していないので、7.2V時のベンチマークデータとの比較です。

(表1:生データ<出力の大きい順>)



<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ)



<考察>

回転数、トルク、最高出力など、あらゆるデータが、9年も前に取得してあったニッケル缶仕様の540SHのデータと 見事なまでに一致しました。ここまでピッタリ一致するなんて、ちょっとデキ過ぎです。 今ほど厳密な計測管理ができていなかった時代に測定したデータが こんなに確からしいものだったなんて、我ながら驚いてしまいました。

この計測結果から導かれる答えは、ズバリ「亜鉛メッキ缶仕様の540SHは、62227ジョンソン同等ではなく、 ニッケルメッキ缶仕様の540SH同等と考えて良い」ということでしょう。

では今後、ニッケルメッキ缶の540SHはすべて亜鉛メッキ缶仕様に切り替わっていくのでしょうか? あくまで私見ですが、 どうもそうは思えません。 性能的には62227ジョンソンより明らかに良いとはいえ、あくまでも位置づけとしては62227のセカンドソース扱いだろうと 考えられるからです。62227ジョンソンがTA05などアッパーグレードのキットには同梱されていないことからも察せられるとおり、 当面は、「上級モデルはニッケルメッキ缶仕様、入門モデルは亜鉛缶仕様」という棲み分けが続きそうです。

となると、上級モデルで62200ジョンソンが入っていると「当たった!」と喜ぶのと同様に、今後は TT-01キットに亜鉛メッキ缶の540SHが入っているのを見て、「当たり!」と喜ぶ、みたいな 光景が日常的になるかも、ですね。でも逆転で使えないと使い道ないんだよなぁ〜540SHって・・・。ブツブツ・・・。


(おわり)



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