posted on 7/01/2003
タミヤRC製品・即買いカタログ
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RC Car Trend モーター研究室

<その37:カワダ「R-COAT」シリーズ徹底解剖!>
PART-2




<R-COATシリーズにレイダウン登場!>
「その36」で紹介した「R-COAT」シリーズですが、こんどは2003年5月の静岡ホビーショーで発表された最新バージョンを早速テストしてみます。

今回テスト対象となったのは、この6月下旬にようやく発売されたばかりの「VSストックモーターR・レイダウン」(品番M1-236BL、価格2980円)です。もちろんJRM/JMRCA認定のリビルダブル23Tストック規格適合品です。レイダウンであることを示す「L」のシールがラベルに追加されています。

基本的に、エンドベル、ローター、エンドベル留めリング、テフロンワッシャー、といった基本的なパーツは「その36」で解説したスタンドアップブラシタイプのVSストックモーターR(M1-236B)と同一です。ただ単に、ブラシホルダーのタテヨコが逆になっただけのようです。

「その36」で明らかになったとおり、VストックとVSストックは「性格が異なる」という次元で語れる違いではありません。根本的に性能レベルが段違いであり、「別次元のモノ」と捉えるべきです。カワダがレイダウンタイプを投入するにあたって、なぜVSタイプしか出さなかったのか?というのも、「その36」の測定結果を見れば自明です。結果が問われるレースというシビアな世界で、わざわざ後から性能の低いものを出したって、評判が地に落ちるだけですからね。賢明な判断でしょう。

<ブラシ>
ブラシは、スタンドアップタイプと同様、この新シリーズのために新たに用意された最新スペックですが、レイダウンタイプではセレートブラシが設定されず、代わりに両端を削ってブラシ幅を標準の4.8mm→4.6mmに詰めた「カットブラシ」が設定されました。ちなみに標準装備されるのはこのカットブラシのほうで、無加工(プレーンタイプ)のレイダウンブラシのほうがopt設定となっています。
カワダVSストック・レイダウン標準の両側カットブラシ
そういえば、このVSストック・レイダウンに入っていた最新版の説明書によると、スタンドアップブラシタイプのV/VSストックでも、セレートタイプから無加工のプレーンタイプに標準設定が変更されているようです。初期のバージョンにはセレートブラシが付いていましたが、これから買う個体にプレーンタイプのブラシが付いていたとしたら、それが最新バージョンだと考えて良いようです。どうしてでしょう?コスト削減かな?(笑)。もっとも、プレーンタイプでも1〜2分のカラ回しで当たりが出てしまうくらいソフトですから、一般にはわざわざセレート加工する必要がなく、むしろ寿命を常識的なところまで保たせるには、磨耗を早めるセレート加工はかえってマズい、と判断されたのかも。

RCTオリジナル・タミヤop.483レーシングモーターブラシ<レイダウンタイプ>の片側カット仕様 そんなわけで、レイダウンタイプでもあえてセレートは不要だったのでしょうね。
ではなぜカットブラシ? という疑問ですが、これは、BBSでも議論されていたように、スモールコミュ(スタンドアップブラシに最適化された、一番古い歴史を持つ標準サイズ<7.6〜8mm経>のコミュ)にレイダウンブラシを組み合わせた場合に生じる、「3極がショートする」という問題を解決ないし軽減するための対策にほかなりません。両端を削っている、というのは、タミヤのTL-01やTT-01シャシーみたいなもんで、ユーザーが左右や前後を気にせずに使っても問題が起きない、という配慮なのでしょう。しかし、JMRCAのようにカットブラシがOKなカテゴリーなら(言うまでもなくタミヤGPでは禁止技です!)カットを片面のみに施すことによって、ブラシの中心線が偏りますから、プレーンタイプと同様の進角(ブラシ幅の関係でスタンドアップブラシより1〜2度程度、進角が余計に付いたタイミングになります)を付けながら、ショートを減らして吹けあがりを改善できるのではないかと考えます。

<ブラシスプリングはなんと225g!>
イーグル模型扱いの#1862「スプリングダイノ1」で計測したところ、224〜228gという幅を計測しました。おおよそ「225g」と考えて良さそうです。スタンドアップブラシのVSストックよりさらに15〜20gも重くなってる!! 驚きです。こんなんで果たして吹けるんでしょうか。レイダウンブラシという仕様からして、もともとトルク指向だからいいのかなぁ・・。さあ、果たしてこのハイテンションがどう影響するのか。楽しみです。

バネ圧の違いからして明白ですが、念のためスタンドアップブラシ用とレイダウン用のブラシスプリングを比較してみました。あら〜、全然違う!上の写真を見てください。左がVSレイダウン用、右が従来のV/VSスタンドアップ用です。逆じゃありませんから注意してください。レイダウン用のほうが、角度は寝ているのですが、巻き数が少なくなっており、その分、テンションが上がっています。タミヤのレイダウンブラシ採用モーターでは、スタンドアップよりむしろ柔らかいバネを与えられ、回転数を稼いでいましたが、VS-レイダウンではカットブラシを採用してショートを減らしているので、その分、回転数が稼げ、スプリングテンションを上げても差し支えなくなっているのかも知れません。さあ、果たしてどうなんでしょうか??

<進角は19度?>
「その36」の該当箇所を訂正しておきましたが、今回、改めて計ってみたところ、20度には達していないことを発見。VSレイダウンもV/VSスタンドアップも進角はまったく同じ量でしたが、厳密には19度程度でした。



***以下の試験は、すべて気温25度±1度の条件で実施しました***

<測定編>

では計測です。まずは「基本性能」ということで、通常の試験条件で、メーカー出荷状態を計測してみます。この時点では、「モーターの過熱」は一切考慮しておらず、基本的に「室温状態=走行開始時点での性能」と考えてください。まずはいきなり、みなさんが一番関心のあるであろう、「その36」のVSストック・スタンドアップブラシ仕様と今回のレイダウン仕様でどう違うのよ!?という点に迫ってみましょう。


(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はVSストック・スタンドアップ(M1-236B))



(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はVSストック・スタンドアップ(M1-236B))



(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はVSストック・スタンドアップ(M1-236B))


んん〜、これは思った以上にどっこいどっこいですね!しかし、やはりスイッチングタイミングを追い込んでいるカットレイダウンプブラシの効果なのでしょう、レイダウンのほうが同じトルクをかけても、低負荷域で特に回転数が高いですね。ただし、カットブラシとはいっても若干は3極同時ショートが発生しているので、特に低負荷(高回転)域での効率が悪化しています(スパークの量は少ないですが)。効率悪化はブラシの過度のバネ圧によるフリクションも原因として疑われるところですが、後述のとおり、バネ圧のせいではないようです。

確かに、レイダウンタイプはあまりにも硬いブラシバネのせいでブラシの摩擦熱がものすごいです。したがってさらにギヤ比を上げて発熱量を増やすことにはかなり抵抗感があります。恐らく、レイダウンで3300セルで1パック、フルに走るとホントにモーター表面が100度を簡単に超えてしまうと思います。たった1分間のカラ回しでさえ、コミュ周辺が40℃を超えてしまうくらいですから。いくらR-COATだからといってもこれでは熱ダレしまくりでしょう。この計測結果は、あくまでも常温時、つまりスタートを切った時点での状態です。これを見ただけだと単純に「レイダウンのほうがいいのか?」となってしまいそうですが、世の中そんなに甘くありません。熱のことを考慮すると結論は逆転します。走り出して30秒もしないうちに状況はガラリと変わってしまいます。バネ圧をスタンドアップと同じか、若干軽くしてやってはじめて、熱の問題も含めた総合的な評価が同じ土俵でできることになると思います。

参考までに、23Tストックのベンチマークとしている、タミヤスーパーストック・タイプTとの比較では、こうなってます。

(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はタミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(<その18>と同じ))



(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はタミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(<その18>と同じ))



(実線はVSストック・レイダウン(M1-236BL)、点線はタミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(<その18>と同じ))



<付属ブラシの実力は?>

「その36」と同様、タミヤの最新仕様ブラシである、RCT通称「丸T」ブラシ(レイダウン仕様はop.483レーシングモーターブラシ)でも回してみました。ただし、op.483はカットブラシではありません。ブラシのカットがないと、効率は若干悪化し、回転数は1〜2%程度少なくなるものの、もともとタミヤブラシの材質のほうが1〜2%程度効率が良いことが「その36」の結果で分かっているので、以上を総合するとカワダ純正カットブラシとトントンの勝負になるものと予想されますが、果たしてどうでしょうか。


(実線はタミヤ製op.483ブラシでの計測値、点線は上掲のVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシでの計測値、点線は上掲のVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシでの計測値、点線は上掲のVSストック・レイダウン基準データ)


んん〜、こりゃまた見事なくらいほとんど同一ですね。ほんのわずかタミヤのほうがいいですね。
ちなみにタミヤのほうは全アタリ状態までナラシ済みで測定していますが、ブラシカットなどの加工前のプレーンな状態です。

<片側カットブラシをトライ!>

最後に、新しい試みとして、タミヤop.483レイダウンブラシを使って「片側カットブラシ」を製作し、これによる性能変化をチェックしてみました。カットした面をエンドベル側から見て右側にすると進角が増え、左側にすると進角が減る格好になりますが果たしてどうでしょうか。なお、今回のブラシカット量は、カワダ純正カットブラシと同量の「0.2mm」としてあります。

<片側カットブラシを進角が増える方向にセットした場合>

(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)


効率アップ、回転数アップ、結果としてピークパワーは136.7Wというとんでもない数字を達成しました。
これって、ダブル15ターンのアクトパワー・ツーリングモーターとほぼ同レベルです。


<片側カットブラシを進角が減る方向にセットした場合>

(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はタミヤ製op.483ブラシ(片側カット)、点線はVSストック・レイダウン基準データ)


さすがに、進角を減らすとパワーは落ちますね。
面白いのは、進角を減らして、かえってピーク時の効率が下がっているということです。
しかし、低負荷域(高回転域)の効率は明らかに改善しています。効率の高い領域が負荷の低い範囲(実用範囲ということになるんですが)へシフトした、ということです。実際に走らせた場合には、燃費はこのほうが良くなります。パワーも落ちますけど。


<おまけ:ブラシスプリングを柔らかくしたら?>

そういえば、ブラシスプリングのテンションがやけに高いせいか、摩擦でブラシがすぐに熱くなります。たかだかダイノを1、2回回しただけでもすぐ40度とかになるので、いちいち冷ましながら測定していましたが、裏を返すと、スタンドアップブラシタイプより発熱がひどいということを意味します。スタンドアップタイプと同程度の摩擦なら発熱は抑えられるだろう、とは考えたのですが、テンションが下がるとどの程度、性能に変化が表れるのでしょうか? VSレイダウン仕様(約225g)にスタンドアップブラシ仕様のブラシスプリング(約210g)を組み込んで試してみました。


(実線はVSストック・スタンドアップブラシ用スプリングの場合、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はVSストック・スタンドアップブラシ用スプリングの場合、点線はVSストック・レイダウン基準データ)



(実線はVSストック・スタンドアップブラシ用スプリングの場合、点線はVSストック・レイダウン基準データ)


見慣れない紫色の線が走っていることにお気付きでしょうか? これは、今回特別に表示させた「フリクション(回転摩擦)」の数値です。これを見ると、特に中〜低速回転域でブラシスプリングテンションがフリクションに影響していることが分かります。逆に、無負荷回転に近い領域では、ほとんど影響していないことが分かります。だから、最高回転数はほとんど同じなのに、ブラシテンションを下げたほうが中速域で出力が上がっているわけですね。この結果についてはもう少し時間をかけて調べたほうがいいと思いますが、今回測定した限りではテンションを下げたほうが好結果になってしまいました。このモーターに限っては、メーカー側でデフォルト設定したブラシスプリング圧が必ずしもベストではなさそうです。

(おわり)


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