posted on 5/29/2003
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RC Car Trend モーター研究室

<その35:TT-01同梱ジョンソンってどうよ?>



エキスパートビルド(XB)専用モデルとして2002年5月の静岡ホビーショーでデビューした「TT-01」シャシーには、これまでに見たことのないチープな外観のモーターが装備されていました。サイズ的には540ですし、エンドベル等のデザインは間違いなく香港・ジョンソン社のものなんですが、カンの素材は明らかに従来のジョンソンより落とされていますた。徹底的なコストダウンを図った新XBシリーズですから、部材コスト削減の目が高価な部品であるモーターまで及んだことは容易に想像できました。しかし、

  • 従来品とホントに違うのか?
  • また、違うとしたらどのくらい?

    といった実際のところは、やはり手にとってみないと分かりません。

    かくして、TT-01第1弾のXBインテグラは、興味深々で速攻入手し、ダイノデータを取ってみたのです。しかし、悲しいかな、個体のバラつきが比較的大きい汎用モーターの調査でサンプルがたったの1個では、データの妥当性に疑問が残りました。このため、このダイノデータはやむなくこれまで「封印」を余儀なくされていました。ここにきて、TT-01が組み立てキット形態でも販売されることになり、キット同梱のモーターも入手することができ、別途計測してみたところ、やはり似たような結果が出たので、ようやく確証を得て今回のデータ公開にこぎ着けた次第です。


    <外観上の特徴>
    XBを購入した段階で、TT-01に付属のモーターは、エンドベルにジョンソン社の刻印があり、まぎれもなくジョンソン社製のモーターであることは確認できていました。しかし、外観から判断する限りでも、従来のジョンソンとはまるっきり別モノであることは明らかです。エンドベルの形状こそ、第三世代ジョンソンと同じですが、モーターカンの素材からして違いますし、巻き線とコミュテータの接続にしても、従来のジョンソンがスポット溶接なのに対し、どうもこのモーターは耐熱プラスチック製のワイヤーガイドに挿入しただけの、機械的なカシメだけで済ましているように見えます。

    後から気がついたのですが、そもそも品番からして違います。従来のジョンソンは、モーターに打刻された刻印を見ると「62200」という番号でずっと通っていました。ところが、このモーターに関しては、型番自体が「62227」という品番に変更されているのです。確かに、読み方としては、「62200系列の27ターン品」という意味に取れなくもないのですが、従来の「62200」にしたって、もともとマブチ540同等品ということでシングル27ターンだったわけですから、わざわざ新しい型番を割り当てたこと自体、「別仕様」ということと理解していいと思われます。

    ちなみに、モーターに打刻されている下段の数字は製造ロットです。組み立て担当者と製造日で管理しているのでしょうか、長年、キット同梱モーターや「カスタマーサービス扱いのジョンソン」(注)を集めていると、ジョンソンの下4ケタの数字はかなりこまめに変わっていることに気がつきます。たとえ「このロットが良かった」とか言っても、後で同じロットを探して入手するのは現実にはまず無理です。1ロット100個もないような感じですから。もしかしてケース単位なのかな? 上2ケタは半年〜1年くらいでゆっくり変わりますから大きな変化は上2ケタの記号で追えそうですが。
    (注)基本的にジョンソンはカスタマーサービスで「ジョンソンモーター」と指定して入手するものですが、有名ショップでは気を利かせて自主的に仕入れているところがあり、そうした店でも手に入ります

    <テストの要領>
    今回テストに用意したのは、ロットの異なる2つの62227型ジョンソンです。

  • ロットNo.「3C2322」・・・XB「インテグラ・タイプR」同梱品(02年8月購入)
  • ロットNo.「3D0234」・・・TT-01組み立てキット「エンツォ・フェラーリ」同梱品(03年2月購入)

    それぞれについて、正転と逆転のデータを3本取り、中間のデータを1本採用しました。なお、モーターは特にナラシなどは行わない新品状態でしたが、データ取得中に、特にブラシのアタリが出て性能アップが進んだりとかいった目立った性能変化はなく、総じて安定していたことを特記しておきます。テスト時の気温は25度前後です。


    <テスト結果>
    テスト結果を端的に示したのが右表です。
    "Number"の項に表したロット番号の末尾に"-R"とあるのは、参考として逆転で計測したデータです。
    ここから言えるのは、

  • マブチ540SHとは明らかに異なり、正転のほうが逆転より若干よく回り、出力・効率も良い(当然か)
  • ロットが違っても、性能はほとんど変わらない(XB購入直後の計測結果は間違いではなかった)
  • 従来の62200型ジョンソンより、10%前後も出力、消費電流、および回転数が低い。
    (注)ここで比較している62200型ジョンソンは、「その2」以来基準としている「第2世代」品です

    参考までに、62227−3C2322ロットと62200基準データをグラフに並べると、次のようになります。ただし、62227-3C2322はもうひとつのサンプルである62227-3D0234と比べ、最大出力にして2%と若干劣っている点に留意してください。現時点ではどちらが標準的な値に近いのかは分かりません。もっとサンプルを増やさないとですね。誰か寄付してください(ただし未使用品)(笑)。



    (実線は62227−3C2322ロット、点線はジョンソン基準データ(<その2>と同じ)、いずれも正転時の数値)


    <なんでこんなに違うのか?>
    同じ部品を使うモーターにしては、あまりに性能差が大きいのはナゼでしょう?

    表の右側にある"Toruque"は、実測値から回帰分析した「回転数ゼロ時の最大トルク」を示す数字です。これを比較すると、絶対的なトルクはほとんど変わらないことが分かります。トルクに影響するファクターは、主にマグネットとローターの磁力ですが、マグネットについては、標準部材ですから、基本的には共通と考えるのが無難でしょう。ナゾを解くカギは、上でも指摘した「回転数」と「消費電流」の差。電流が流れにくいというのは、モーターの内部抵抗が大きいからで、そう思って表の右端にある「抵抗値(Resistance)」に注目すると、案の定、62227−3C2322ロットは97.0mΩもありました。ちなみに62200型(ジョンソン基準データ)は74.8mΩです(それでも23Tストックなどと比べるとかなり大きいです)

    単純な話、62227(XB用)は62200(基準データ)に対し、およそ30%も内部抵抗が大きくなっています。ちなみに、ここで表示している内部抵抗というのは、投入する電力と損失の均衡点としての「無負荷最高回転数」での値です。注意したいのは、「抵抗」といっても、直流回路の固定抵抗のイメージは薄くて、主な成分は交流回路の抵抗成分、つまり「インダクタンス」である、という点です(モーターはスイッチングしながら動いているので、回転数が上がると、ローターに流れる電気抵抗は交流回路の抵抗として捉えるべきなのです。ただし、私は電気の専門家じゃないので、詳しくは専門書なりその筋のウェブサイトを当たってください)

    インダクタンスは、「モーター起動時」には回転が止まっているわけですから限りなくゼロです(起動時の抵抗成分はもっぱら直流抵抗)。そう!この点こそ、起動トルクがかなり近似しているのにトップエンドの伸びが全然違う理由だと考えられるわけです。

    ではなぜ、内部抵抗がこんなに違うのでしょう? やはり、最大の要因は、例の巻き線のコミュテーターとの接続方法にあるのではないでしょうか。スポット溶接を使わず、カシメだけで済ませているとしたら、モーターコードのギボシ接続とハンダ直結くらいの差があって当然です。このほか、ブラシ素材の抵抗差も考えられなくはないですが、それなら起動トルクでも差が出てしまうはずですし、そもそもコストダウンにならない限り、部品バリエーションの増加は避けるはずなので、マグネットと同様、ブラシはまったく同一、と考えられます。やはり、この差はローター側の仕様の違いにある、と考えるのが自然ではないでしょうか。

    (おわり)

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