posted on 9/22/1999
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RC Car Trend モーター研究室

<その8:伝説の白ジョンソンを追え!>



<白ジョンソンって何?>
前回、「新型ジョンソン」のお話をした際にも書きましたが、 ジョンソンモーターが1986年10月に初めてタミヤキットに同梱されるように なった際には、単に「特製モーター」としか表記されておらず、同梱対象も、「モンスターピックアップ・シリーズ(2駆)」という、 極めて嗜好性の強いキットで、決して多数のユーザーの目に触れたわけではありません。しかも、当時大人気のバギーキットへの同梱は 「グラスホッパー2」あたりで終わってしまい、90年頃にはRCTで「旧型(第2世代)」と表記しているモデルに 切り替わってしまいました。流通期間が短く、販売量も少なかったことから「初期型ジョンソン」の認知度はかなり低かったと思われます。

既に、キット同梱が終了してから10年近くが経過し、90年代以降にF1やツーリングカーのブームで RCに入ってきたユーザーは全く目にする機会もなかったため、「白ジョン」の存在は半ば伝説となりつつあります。
しかし、筆者は、RC復活して間もない93年頃に耳にした「昔のジョンソンのエンドベルは白かったんだよね〜」という言葉が忘れられず、 なんとかしてもっと詳しい情報を得たいと願っていました。ウワサではなく、真実を知りたかったからです。

果たして「2世代目ジョンソンよりパワフル」という評価は本当なのか?
エンドベルが白い、というのは樹脂だったためなのか? 金属に白い塗装だったのか?
どんな形をしていたのか?
そもそも本当にジョンソンなのか?
・・・などなど。

くだらない懐古趣味、といってしまえばそれまでなのですが、
モーターダイノという測定機が実用化された今だからこそ明らかになる事実も数多いはず。
万が一にも「やっぱり昔のモーターのほうが良かった」なんてことになれば、 コンマ1秒を争うトップレーサーたちがこぞって「白ジョンソン」発掘に血眼になるかも知れない・・・。

そう思うと、空恐ろしい気がしたのも確かです。
このような情報こそ、「表とアングラの狭間で『トレンド情報』を発信するRCTならではの「面白情報」だと思いましたが、 反面、情報入手のアテがまるでなかったものですから、単なる「夢」でしかなかったのです。つい先日までは。

ところが、幸運は突然やってくるもので、ある日、RCTの読者の方から、「これ、ひょっとしてウワサの白ジョンソン?」という問い合わせがあり、 さらに何とこのモーターを無償でご提供くださることになったのです! しかも新品で!

なんという幸せでしょう。ご提供くださった方には本当に感謝しています。自分では到底探せない代物でしたから・・・。

そんなわけで、すぐにでも調査にとりかかりたかったのですが、何せ私は今年から家庭の事情で「RC活動休止」の身、 とてもモーターダイノなんて回せる状況にありませんでした。そもそも、実家から新居へ引越したばかりで、 家族の目を盗んで新居へダイノを運搬するにもひと苦労。12Vバッテリーは運搬をあきらめて近所で買い直しました。 ようやく体制が整った時には既に7月も終わりかけていました。発表が遅くなりました点をこの場を借りてお詫びします。

また、今回ご提供いただいたジョンソンは、それこそ文字通り「貴重品」ですので、おいそれとナラシなんて入れてしまうと 永遠に初期データ(ナラシを入れていない購入直後の状態)を取ることができなくなってしまいます。 慎重を期して、今回はまず初期状態のデータのみを取り、比較してみました。

<まずは外観調査>
いつもに増して前フリが長くなりましたが、ダイノデータを見る前に、まずは外観をチェックしましょう。

注目されるのは、やはりエンドベル。ウワサ通り、白い樹脂製で、ちゃんとジョンソン社のロゴが刻印されています。間違いなく「ジョンソン」です。
ピニオンを取りつける側の軸受けにも注目してください(上の写真が見やすいかと思います)。 何とアルミの削り出しです。プレス加工ではありません。そう言えば、 次回ご紹介する「540ブラック・エンデュランス」も同様の仕様でした(あちらはボールベアリング支持ですがこちらはメタル支持です)。 当時はかなり贅沢なことをやっていたもんですね。
なお、モーターカンのブラシを覗く穴は、意外なことに第3世代と似た2つ穴形状でした。
当時、見た目には6V仕様の540S(白い樹脂製エンドベル)とちっとも変わらなかったわけで、これでは認知度が上がるはずもありません。 ただし、コンデンサーは、マブチが外付けだったのに対して、ジョンソンではエンドベル内部に内蔵されていました。
またバランス取りは、面白いことにエポキシの重り接着とローター削り処理の両方を施しています。これもまたずいぶんと手が込んでいますね。
ブラシ形状は、現行品と同一で、2接点式です。

(初期型ジョンソン<第1世代>)


 

 

 

 


 

 

 

 

(参考:新型ジョンソン<第3世代>)


 

 

 

 

(参考:従来型ジョンソン<第2世代>)


 

 

 

 

(参考:マブチRS-540SH)


 

 

 

 

<ダイノにかけてみよう!>
さて、それではお待ちかねのダイノデータを見てみましょう。

まずは、ジョンソンの基準スペックとしていつも使用しているモーター(型式は旧型ジョンソン)のデータとの比較です。

あれれ、「白ジョン」はトルクは1割、回転数も6%低いです。EMF値は逆に大きいので、磁力が強いのかな〜、という気もしますが、 EMFはあくまで他のデータから導かれる相対値なので、あんまり信頼できません。 起動時の消費電力が「白ジョン」では54.8Aしか流れていないのが気になります。 「標準ジョンソン」では67.0Aありますし、普通、ジョンソンなら65〜70Aというのが起動時消費電流の標準的な値です。
もしかすると、ブラシのアタリが出ていないためかも・・・。

性能曲線の出方に見覚えがあったので、念のため・・・と思って540SHのナラシ前の標準データと比較しました。
これがなんとドンピシャではないですか! あっはっは。
起動時消費電流、EMF値のいずれも「白ジョン」のほうが劣っていますので、これはどうも「白ジョン」のブラシコンディションに 問題あり(油膜の付着とか、表面の酸化とか)と思われます。 測定自体は、何のトラブルもなく、最初の1発目から美しいデータが取れたので、電気的な接触には何も問題はなかったのですけどね・・・。

その辺をさらにクリアーにしようと、今度は第3世代「新型ジョンソン」基準モーターのナラシ前データと比較しました。

そうすると、回転数や消費電流は大きく変わらないことを再確認したのですが、トルクが15〜6%も違うことを発見。
「新型ジョンソン」はナラシ後に回転数が大きく伸びて、結果的に「旧型」よりもパワフルなモーターであることを 前回確認済み(下のグラフ参照)ですが、これだけトルクに差があると、たとえナラシを入れたとしても、「白ジョン」が「新型」に匹敵する パワーを身につけることは難しいと思われます。

もちろん、テストしている「白ジョン」は、製造後10年以上経っていると思われますから、 その間の磁力低下といったファクターを無視するわけにはいきません。しかし、入手の経緯からして、入手直前まで 何かのキットのブリスターケース内に眠りつづけていた、とされるモーターですので、そんなに簡単に 目に見えるレベルの磁力を失っているとは考えられません。実際、自分が購入後5年以上経過しているような モーターでも、未使用である限り、はっきりそれと分かるような磁力低下現象は発見されていませんし。

<結 論>
「白ジョン」の伝説は、今となってはどうやらガセネタとなってしまったようです。
ただ、当時の状況を振り返ると、マブチ540Sが7.2V対応のSHとして再登場するまでの 間は、確かに「もともと6V用の540Sを7.2Vで使うよりはパワフル」だったのかも知れません。 当時のユーザーにはそれなりに印象深いモーターだったのでしょう。
実は、「540ブラックモーター」にも似たような話があります。これはまた次回にお話ししましょう。

(この項おわり)

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