(posted on Nov 17, 2004) (updated on Jan 18, 2007)
タミヤRC製品・即買いカタログ
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タイレルP34復刻版(3)





ギヤ比表

さて次はシャシー中央部に目を映してみましょう。作例ということを意識してますので基本的にキット素組みです。ただしメカ積みはかなり手抜きしていますのでそのつもりで見てやってください(笑)。

バッテリーホルダーはタイレル用に用意された短形の1700MPバッテリーに合わせて作り直されました。といっても左右の「受け」の部分だけの変更で、中央部分は従来のものと互換です。そもそも、昔はこんなホルダーなんか使わずに、余計な部分を切り落としてアッパーデッキからグラステープ止めでバッテリーを吊り下げていましたからどうでも良かったんですが、ホルダーを利用されたい方は従来型とタイレル用の区別にちょっと注意。
カツカツ車でないということで、アンプは今やクラシック殿堂入りしつつあるキーエンスの初代A-01(モデル後期の低抵抗タイプ)を搭載(実は未使用の下ろしたて<爆>)。実に1996年という昔に発売されたモデルだけに、BEC出力がたった1Aと細いです。デジタルサーボで電気バカ食いのいまどきのハイエンドレースに使う気にはなれませんが、マイナーチェンジ後には実測内部抵抗0.4mΩに達したそのハイスペックは、2〜3万円で売ってる最新の最高級アンプとまったく同水準。ということは近年のアンプは内部抵抗の低減は行き着くところまで行っちゃってる、ってことなんですよね。余談ですが。
受信機も実はやや古めのフタバFP-R123Fを使い回しています。昔、渋谷トップサーキット時代にF1やMシャシーで 軽量化対策として流行った「収縮チューブ処理」の名残り、というか当時のまんまのモノです。

使用しているチューブはKOから普通に売られている7.2Vパック用チューブ。もちろん他社のものでも構いません。 適当にハサミで切り、瞬間接着剤を使って「紙工作」の要領で受信機を包み、箱状に組み立てます。 そのまま使っても構わないのですが、ドライヤーで縮めて収縮させる場合は、収縮させてからコネクターとクリスタルの穴を開けるとキレイに仕上がります。昔はカーボンやチタンのパーツが高かったし、受信機サイズも大きかったので、これで5〜10g軽量化できるのは非常に価値がありました。体積も減ってコンパクトになりますから、デカい入門用受信機とかなら今でもやってみる価値はあるはずです。
なお、昔の受信機はアンテナが長いので、Take Off製のアンテナボビンを使って巻き取っています。この形、実は20年以上前に既に 「ラジコンマガジン」誌で紹介されてた覚えがあります。自分で作るとなかなかキレイに作れないので、誰か作ってくれるといいなぁ、 と思ってたら1995年前後に出た、というモノです(古るぅ〜<笑>)。実はあまり売れなかったらしく、 手に入りにくかったのでもったいなくて使えず、かといって棚の肥やしにしていても意味ないので、つい最近ようやく使い始めたのでした(苦笑)。

A-01は古いアンプですが、筆者もその間にずいぶん勉強したので、モーターコードの配線は最新のノウハウとスキルを盛り込んでいます。デフォルトでハンダ付けされてるコードを一度外し、ベストの取り回しができる向きに変えて最短距離で再接続しています。
注目は一番右の+端子ターミナル。昔はバッテリー側とモーター側を2分割して別々にハンダしていたのですが、考えてみると、 せっかくストレートに電気を流せる線をわざわざ切断して電気抵抗を増やしているバカな話です。 そこで2002年のタミヤ世界戦出場を契機に、 バッテリーからモーターまで「一気通貫」させる配線方法に切り替えました。 なお、今回は取り回しを良くするためターミナルの「角」にわざとハンダ付けしています。

「住めば都」じゃないんですが、一回ブレークスルーしてしまうとあとはイケイケで、すっかりこのやり方を極めてしまいました(笑)。なお写真では、モーターへの配線がかなりタイトです。本当はリヤのTバーの動きを妨げないよう、もうちょっとたるませておいたほうが良いです。あと5mmほどコードが長いと良かったかな、と思っています。この状態でも特に走行時に不具合は出ませんでしたが。
ところで、先ほどから写真に写っているバッテリーを気にしている人がきっといらっしゃると思いますのでコメントしておきます。セル自体は何の変哲もない使い古しの北米仕様サンヨーRC2000ニッカドセル(TRINITYブランド)でどーでもいいんですが、セル数を4セル4.8Vにしています。 これがRCTからの新しい提案、「ヒストリックカーを4セルでまったり楽しもう!」というコンセプトです。

4セルというと、まだまだ日本では1/12オンロードなどごく一部のマニア限定の感があります。ヨコモが一時期4セルDDツーリングを提案しましたが、結局モノになりませんでした。しかし4セル時代はきっと来ると思います。23ターンモーターとの組み合わせで「540並み」の穏やかなスピードが得られるからです。スポーツ性の高い暴力的なパワーが欲しければ6セルに交換すればいいだけなので、クルマが「1台で2度おいしくなる」わけです。
4セルの搭載はいたって簡単。バッテリーホルダーの脇にナロータイヤ用のインナースポンジを両面テープで貼るだけ。実はこれがドンピシャの厚みで超お薦めです。ちなみに作例ではタミヤの使用済みナロータイヤから回収したハードインナースポンジを使用。タイヤには使えないインナースポンジが立派に再利用(笑)。

気になる「走り」のほうなんですが、以前にも「TA-03RRエボ」のページでご紹介したとおり、実はあんまり影響ありません。もともと重心付近に置かれているモノなので、軽くなっても重心にあまり影響しないようです。電圧が落ちるのでパワーは落ちるんですが、クルマが110g以上軽くなるので、ギヤ比を上げてやればそこそこスピードは出ます。軽いということはいろんな魔法を生みます。モーターの発熱量が減り、したがってモーターがいつまでも熱ダレせずに意外に実走行時のパワーが出ます。タイヤやモーターのライフが延びます。クラッシュしても壊れにくいです。維持コスト、メンテナンス性、環境負荷などあらゆる面で「優しい」クルマ、というのが4セルマシンの魅力なのです。
さてリヤビューなんですが、この復刻版のウイングステーはF103のギヤボックスに合わせて取り付けビス穴周辺の形状が微妙に変更されているものの、基本的にはオリジナル版の形状を踏襲しています。

実は2000年春にタイレルボディの催事限定販売が発表された際、「ワンダーランド」さんというクラシックRC専門ショップがオリジナル版ウイングステーのレプリカを100個限定製作しました。この際に分かったのですが、実はオリジナル版のビス穴位置ってF103のウイングステー穴位置とピッタンコなんです。ビス径がオリジナルは2mm、F103は3mmなんですが、オリジナルは上下も合わせて4点留めだったので、左右の穴だけ3mmに拡大すればF103にも使えるよ、という売り方ができたわけです。
その後、タミヤが復刻版用に安価にステーを生産したのでF103にはこちらがお薦めなんですが、オリジナル版のレストアには使いにくいのでオリジナル版レプリカが欲しい方はいらっしゃると思います。当時勢いで買い込んだワンダーランドさんのレプリカステーが必要以上に余ってますので、どなたかご入用の方はこちらにご連絡を。

ただし非常に貴重なモノですから、オリジナル版シャシーを走行用にレストアしたい方限定で1人1個です。筆者自身のコレクション維持のため、少なくとも筆者が生きてる限りは永久在庫するつもりですので、このページを20年後に読んだとしても諦めずにコンタクトしてみてください。ただし「蔵」に入ってますのでタイムリーにお渡しできる保証はありません。発掘してお渡しできるまで半年〜1年くらいかかる場合がある旨ご了承ください。
なお、写真に写っている緑のモーターは懐かしいWAVE(シンナゴヤ)ブランドの1994年頃の初期のWAVEモディファイド缶(ベアリング軸受け)です。筆者の手元では今でも「現役」です。使い古しの23Tストックから回収したローターを仕込んだスタンドアップ仕様の「なんちゃってリビルダブル23T」になってます。遊びなんで、性能とかどーでもいいんで。コミュ研磨もせず、ブラシが半分以上擦り減るまで使い倒そうと思ってマス。

さすがに近年は走行時間が伸び、パワーもアップしてるしで、モーターマウントを溶かすリスクが増えています。素直にoptのアルミマウント使えばいいんですが、「色」が好かんので樹脂にコダわっています。そこでモーターの熱をマウントに伝えないように、ツーリングカー用のモータープレートを追加。紙のような空気層のある構造で断熱効果が得られます。その分モーターは熱ダレしますけど。
冷却以外の機能については樹脂マウントでも特に問題はありません。昔の渋谷トップサーキット界隈では「540規定なら樹脂のまま」が当たり前でした。さすがにダイナランストックとかを使うようになったローカル規定のF103レース末期にはアルミマウントになりましたけど。

なお、ギヤはキット標準の06モジュールをあえて使っています。耐久性はこちらの方が良いし。音はウルさいけど(笑)。

キット標準のリヤタイヤは、フロントと同様、当時の型そのもので泣かせます。ただしホイールはハブサイズの都合で F10x系のファイバーモールドゴムタイヤ用ホイールです。オリジナル版のリヤホイールよりちょっぴり幅が狭いのですが、 組んでしまうと意外に違和感はありません。
昔は路面によってはスポンジタイヤよりもこの中空ゴムのほうが食う場合もあり、筆者はもっぱらこの中空ゴムタイヤで走り込んでたんですが、この25年間に電源が6V1200mAhから7.2V3600mAhになって、走行時間は2倍程度にしかなってないんで、パワーの差は歴然。もはやこのタイヤではマトモに走れません。飾りにするしかないです(苦笑)。何しろXBにもスポンジタイヤが同梱されるくらいですから、そのタイヤ性能のプアーさは容易に察することができるでしょう。時代の差ですね。

さておしまいに、リヤサス回りのチューニングTipsを。
まずはダンパー回りのセッティング。昔なら速攻でoptのローフリクションダンパー(今ならフッ素コートTRFかな)を組み込んでしまったところですが、このキットを組む方の多くやXB購入者にとっては「キット標準状態」が全てでしょうから、その前提でどのようにチューニングするか。
F103シャシー共通のこのダンパーユニットは、「フリクションダンパー」と呼ばれるタイプで、本来はダンパーシャフトの摩擦力で減衰効果を得るものです。1/12オンロードレーシングで何度もチャンピオンを獲っているアソシエイテッド社の「RC-12L」シリーズなどにも長年採用されてきた、簡易な構造ながら非常に実績のあるシステムです。

ただし、F103の場合は、あまりにも作りが簡単すぎて、ダンパーシャフトに摩擦力を与える機構が備わっていません。普通はシャフトは金属で作ってOリングとかでフリクションを付与するわけですが、そういう構造になってない。

こういう場合、シャフトにグリス等を塗布するんですが、あいにく、F103のダンパーユニットは「ガバガバ」な構造で、しかもデビュー当時は、あまり適切な塗布物が見当たりませんでした。
人によっては1万番とかの高粘度シリコンオイルを使っていたようですが、シリコン「オイル」は流動性が高く、余計な場所まで容易に広がって流れ出してしまうのでタチが悪いです。同じシリコン製でも、京商から出ているグリスタイプのものならまだ良いのですが、1万番とか3万番でも柔らか過ぎでダメだったのです。

ところが時代が変わり、今はタミヤ「アンチウェアグリス」というのがあります。モリブデン系で、本来はジョイントカップなど高荷重箇所に使う耐磨耗グリスですが、メチャクチャ粘っこいので扱いにくく、タイヤカスが付いたら取れないのでツーリングカーではギヤデフなど密閉部にしか使いたくありません。ところが、F103のフリクションダンパーにはこの粘っこくてむやみに広がらない特性が実にピッタリなのです。タップリ盛りつけて挿入すると、実にイイ感じで作動します。もうオイルダンパーがなくても大丈夫。
次にフリクションプレートの取り扱いについて。実はこのプレートには基本的に何も塗る必要はありません! 1/12レーシングとかだと、テフロンシート貼ったりシリコンオイルとか塗ったりしてチューニングするんですが、F103がタミヤGPの主役だった時代、いろいろ試して、どうも調子が出なくて、結局いつも「塗らない」に戻っていました。だからよほどの理由がなければ塗らなくて平気です。

なお写真は、タミヤグランプリ仕様の1996年まで使っていた当時最先端バージョンのF103で使用したop.148のカーボンフリクションプレート(93年9月発売)です。 素材がカーボンでもFRPでも、減衰効果自体は変わらないんですが、「ビス」にコダわりがあります。8mmドリルで皿ビス加工しているのです。 実はこの差がフリクションプレートの位置決め精度に大きく影響するんです。非常にポピュラーな改造でタミヤGPでもOKでした。 タミヤでも2000年1月にop.395「F103カーボンフリクションプレート(500円)」として出し直したくらいです。 ちなみに、ノーマルの丸ビス止めだと、一目で分かるくらい取り付けが斜めになってしまいます。ビスの締め付け強度を上げてもダメです。 穴寸の精度で決まってしまうのでいくらヒネっても直りません。ノーマルFRP製を使うにしても、できるだけ皿ビス加工をお奨めします。 作例では無加工なので思いっきり斜めってます(苦笑)。
組み合わせるパッドも、ノーマルのポリカ樹脂製でもoptのテフロン製でも意味のある差は感じません。「色の好み」であえてポリカ製を選んでるくらいです。でも「んじゃーF103初期のトリプルパッド仕様のフリクションプレートはどうよ?」と言われるとアレはダメでしたし、「パッド外したら?」というとコレも良く走らないんです。さらに言うと、作動のスムーズさではやっぱりテフロン製に分があります。ただし、着目点はあくまで成型方法の違いによる「引っかかりのなさ」であって、摩擦力じゃないんですよね。パッドの摩擦力そのものは「絶対に要るんだけどほとんど要らない」という、実にビミョ〜な要求なのです。


というわけでひととおりの解説とTipsをまとめてみました。これだけの知識を揃えておけば、これからXBを買うユーザーにもタイレルの走りを快適に楽しんでもらえると思います。とにかく「サーキットで元気に走るタイレルの勇姿をもっとたくさん見たいぞ!」ということで、「同志」の皆さん、どうぞヨロシク(笑)。




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