(posted on Aug 28, 2007)
(updated on Aug 14, 2014)
タミヤRC製品・即買いカタログ
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ダートスラッシャー
(Item58160、定価11,800円(税別)、95年9月26日発送)


入門用4WDバギーの傑作として評価の高かった「マンタレイ」の発売から5年後、
気分一新の新バリエーションモデルとして発売されたのがダートスラッシャーです。
基本的にはマンタレイのボディ違いバージョンですが、
箱入りのスペアボディセットが出されるなど、当時、既にバギーブームが
衰退の一途を辿る状況のなか、かなり気合入りの取り扱いをされた期待のモデルでした。
結果的に、流通在庫の消化がかなり長期化し、寿命の長いモデルとして
ショップの棚を飾ることになりましたが、その間、絶版となったマンタレイ系
バギーモデルの貴重なパーツ供給源として貢献したほか、実戦的なボディが評価され、
JMRCA全日本バギー選手権など本格的なレースシーンでも長らく活躍したのです。



ギヤ比一覧表

ダートスラッシャーが出た当初、その未来的なボディデザインに素直に「カッコいい!欲しい!!」と 思ったものです。後から昔のカタログを見てみると、なぁ〜んだ、スコーチャー(Item58075、88年12月発売)の ウイングを変更しただけかぁ、とその安易な企画に驚いてしまいましたが、どうにも サマになってなかった(と個人的には思う)スコーチャーが、大型のウイングに変更しただけでこんなに引き締まった ルックスに大変身するなんて、本当にビックリです。
当作例はキット素組みではありませんが、オリジナル状態から最低限のチューニングしかやっていません。 キット標準と異なる主な点は、1)リヤタイヤ(optのスパイヤースパイクに変更)、2)ホイール 前後ともoptのスターディッシュに変更、3)駆動系(センターシャフトをoptのハードタイプに交換)、4)軽量化(樹脂製アッパーデッキの撤去)、 5)機械式スピードコントローラー仕様からアンプ仕様への変更、6)催事限定色の樹脂部品(バスタブ、サスアーム等)への交換、 7)ダンパー(ネジ止め式のCVAからピロボール式のCVAIIへ)などです。

ダートスラッシャーのキット標準タイヤは、前後とも共通で op.59 スタッドスパイクタイヤ(ワイド) とop.58デイッシュホイールの組み合わせでした。この組み合わせはもともとはマッドキャップ(58082、89年11月発売)のリヤ用として出たものでしたが、 ダートスラッシャーではホイール成型色がグレーホワイトに変更され、定番パーツ化はされずカスタマーサービス専売品となっています。

「ダスラ」標準のタイヤ&ホイールはストックしてあったんですが、写真撮影時は都合により「RCTチューン」標準の黄色のホイールに前のみop.59を装着しています。後ろは op.93 6029・スパイヤースパイクタイヤ です。磨耗の点ではピンが太いスタッドスパイクのほうが良さげですが、グリップの面ではスパイヤースパイクのほうが有利なことが多いですね。砂利が多めのオフロードならスパイヤースパイクが今でも第一候補でしょう。フラットダートなら今は op.879 ハイデンシティスパイク がありますが。
実はop.59とop.93はタイヤサイズが微妙に違うんですが、1〜2mmの違いなので「ゴムは伸びる(笑)」 ということで問題をクリアしています。案外、タイヤってチャランポランが許されるものです。タミグラでもこのような組み合わせが特に問題視されることはありません。タミグラでなければ、米国プロライン製タイヤとかをタミヤホイールにムリヤリ履かせるのもアリです(おおよその幅が合えば)。

作例で使っているホイールは、ナイロン製の op.86 6029・後輪スターディッシュホイール なんですが、リヤはタミヤから以前出ていたナイロン染料(op.130)で染めたもの、フロントにはカスタマー取り寄せの黄色い成型色のスーパーファイターG用リヤホイール(部品番号9400239、送料込み1250円、タイヤとセット販売)を装着しています。色味が微妙に異なるのはそのせいです。染料で染めたほうがレモンイエローっぽくて好きですが、やはり「成型色で黄色」といういほうがラクチンですね。
JMRCA全日本などでの激しい競争で洗練が進み、1/10RC四駆バギーのデザイン傾向が収斂に向かい始めたのは1988〜90年頃です。この頃になると、シャフト駆動かベルト駆動かという違いはあっても、主なデザイン要素は各社とも似たり寄ったりになっていました。この結果、異なるメーカー間でのパーツ互換性が豊かになってきたのがこの時代の特徴です。典型的なのはホイールハブで、「タミヤの2mmハブピン(+六角ハブ)」がすっかり世界標準として定着しつつありました。タイヤやホイールなんて、求める性能が同じならば、その設計も似たり寄ったりになるわけで・・・。それに、形状を合わせ込んでパーツの入手をしやすくする、というメーカーの打算やユーザーの要望もあったりなかったり・・・。スパーギヤに関してはキンブロー製に代表されるいわゆる汎用スパーを採用するメーカーが主流になりました(タミヤがバギーに汎用スパーを導入したのはTRF501Xが初めてでした)
このような時代背景のなか、90年10月に発売されたマンタレイは、まさに当時最新のノウハウをフィードバックした最新鋭の入門用モデルでした。フロント全幅がリヤよりもワイドなディメンション設定や、バンキッシュ/イグレス/アバンテ2001で初めて導入されたリヤトーイン(1.5度)を見直し、「2度」へと一段とリヤトーインを強調したアライメントを採用。重量配分やシャシー剛性、車体重量やメンテナンス性など、あらゆる面に配慮が行き届き、入門用ながらちゃんとしたオイルダンパーも装備され、「安いけど良く走る」クルマに仕上がっていたのでした。これで売れないハズがありません。果たせるかな、マンタレイ系バギーは90年代前半を代表する傑作として人気を博しました。後にツーリングカーシャシーのベースモデルとしても選ばれる際にも、その販売実績や流通パーツ在庫の潤沢さが考慮されたことは想像に難くありません。
ダートスラッシャーの発売は、マンタレイから5年後の95年9月。このわずか5年の間に、バギーを取り巻く市場環境は激変しました。まず、一時は社会的現象にまでなった未曾有のバギーブームの衰退。ユーザーを奪ったのは「スーパーファミコン」(90年11月発売)と「プレステ」(94年12月発売)でした。公園や空き地で子供たちが「レースごっこ」に興じる姿はいつしかバッタリなくなってしまいました。ブームを担った「ベビーブーマーの子供」世代は高校や大学への進学に伴いRCから「卒業」が相次ぎ、オフロードサーキットやショップは相次いで閉鎖に。「次世代のユーザー育成」には少子化や子供の塾通い増加も大きな逆風となりました。タミヤGPでもバギークラスの設定がどんどん減っていき、既に94年頃には、TV収録レースと毎年年初の「新春フェスティバル」くらいしかバギーで走れる機会はなくなっていたのです。
タミヤがオフロードモデルを積極的に発売していたのはTRFが活動を休止した1992年頃まででした。93年にはまだ開発の余韻が残り、「ダイナブラスター」や「ブリッツァービートル」「スーパーホーネット」等の発売がありましたが、94年になると、発売されたオフロードモデルはTA02ベースの「トヨタ・プリランナー」とCC-01シャシー第2作の「ジープ・ラングラー」のみ、という情けない状況に。

こんな状況のなかで発売されたダートスラッシャーには、「四駆バギー市場の復活」に賭ける当時の商品企画スタッフの強い思いを感じます。発売当初からスペアボディセット(sp.670、1800円)が設定されていたのも当時のオフロードモデルとしては破格の扱いでしたし。
だって、当時既に、ホイールやタイヤが軒並み店頭から姿を消していて、少なくとも首都圏のRCショップでは入手困難だったんですヨ! 走る場所がないんだから売れるわけないし、店頭在庫がないのはある意味当然だったんですが・・・。シャシーやバルクヘッド、駆動系はTA01/02と共通だったので入手はラクでしたが、「タイヤ」がないことには話になりません。トホホ。

そんなことからも推して知るべし、残念ながら、キットの売れ行きは鳴かず飛ばずでスペアボディもいつまでたっても売れ残ってました。ただ、結果としてロングセラー商品になったことは、「種火を灯し続けてくれた」という意味でバギーファンには大きな意義がありました。実際、筆者も96年頃にこの車体を組んで「四駆バギーなるもの」を初体験したわけですし、九州などのバギーフリークの方々はこの入手容易なボディセットを活用してDF-03が登場したつい最近までマンタレイ系を現役で楽しんでらしたようですしね!
シャシーはマンタレイのボディ形状に合わせた設計でしたが、どうしてどうして、「もとスコーチャー(ベースシャシーはサンダーショット)」のボディ形状にも驚くほどフィットしています。特に、フロントタイヤ後部のボディとの合わせ目がタイトなので、泥やゴミのバスタブ内への巻き込みは割と少ないほうです。

シャシー底面は泥が付着しにくいようにフルフラットになっています。前後バルクヘッドを止めるためにメインシャシー底面に露出しているビスの本数は前後わずか2本ずつ! この圧倒的なビス本数の少なさはマンタレイ系シャシーの大きな美点として今も輝きを保っています。これならアンダーガードなんて要らないし、泥が詰まったビス頭を掘り返すにしてもラクチンです(テープで目張りしとけば? というツッコミはナシで)。
前後バルクヘッド底面にはリブが入っていますが、これは補強に役立つだけでなく、ジャンプの着地で路面に擦れた際に「点接触」になることで摩擦抵抗が軽減されるメリットもあります。前後サスアームも泥が付着しにくいことを狙ったツルンとした形状で、軽量化のため中空形状の分割パーツ2個から組み立てる方式を採用。ナイロン製で強度も十分でした。むしろ壊れるときはサスアームじゃなくてバルクヘッドが先に逝ってしまう感じでした。

なお、作例の上下サスアームは催事限定の白い成型品で、ナイロン製なので染料で赤く染めています。また、バスタブシャシーも催事限定として販売されていた成型色・赤のものです。いずれも1995〜96年頃にモデラーズギャラリーやタミヤサーキットショップ等で販売されていたものです。
ボディは、指定どおりに塗るテもあったのですが、未来的なスタイルを強調するため、コクピット部分は F-16戦闘機などのキャノピー風にサッシュレスにしてみました。透明じゃカッコ悪いので当時出たてのウインドウ用スモークスプレーをうっすら吹いて仕上げ、みたいな。

当時はF-1用ステッカーが390〜460円程度とかなり安かったし、「Agipステッカーで赤けりゃフェラーリ」と相場が決まっていたので、今のように自作のスポンサーマークを裏張りしてボディを作るような面倒なこともなく、カスタマーからまとめ買いしてバシバシ貼ってたラクチンな時代でした。
作った当初は事情が分からず、ナゾだったのですが、「機械式スピコン仕様の名残り」を残しているのがこの穴。固定抵抗をシャシーから突き出して走行風で冷却するための穴です。実は、マンタレイ系バギーの固定抵抗の位置関係は、以前の入門用四駆シャシーの名作「サンダーショット」系をそっくり踏襲していて、ボディを流用すると穴位置がドンピシャなんです。「スコーチャー」はもともとサンダーショットのボディ違いモデルでしたから、この穴もそのまんま生きたわけです。80年代のタミヤのバギーボディっていうのは、今のツーリングカー並みに互換性が確保されていて、異なるシャシーからボディだけ「載せ替え」することが結構可能だったんですよね。
作例では、ボディセットに付属していた「抜き板」にも塗装をして、裏からグラステープで止めて穴を塞いでいます。
ではいよいよシャシー各部を見ていきましょう。
フロントダンパーはツーリングカーでおなじみのCVA2ミニより一回り長いCVA2ショートを使っています。キット標準はネジ止め式の初代CVAでしたが、ピロボール式のほうがラクだし当時はもう初代CVAの入手のほうが面倒になってきていたのでCVA2をチョイス。バネは当時、何を選んでいいのか判断つかなかったので、とりあえずダンパー付属のバネを付け、そのまんまになっています。今ならDF-02/03用やTRF501X用など様々なバネがあるのでセッティング出しも楽になってますね。
実際にTA-01/02ないしマンタレイ系バギーのキットを組んだ方ならご存知でしょうが、実は、バギー系とツーリングカー系ではショックタワー(ダンパーステー)形状が違うので、「写真のような組み合わせは」素組みではあり得ません。実際には、バギー系の黒いバルクヘッド部品(カスタマーサービス専売品)はシャシーの黒いツーリングカーに回して、「余った」バギー用ショックタワーに「赤い&実売が安い」ツーリングカー用バルクヘッドを組み合わせてご覧のような「赤いシャシー」になったのでした。せっかく赤いバスタブが手に入ったので、どうせやるんなら徹底的にやっちゃえ、という趣向です(笑)。
フロントボディマウントはこの1本だけ。リヤも1本で計「2点止め」というのはなんとも心細かったのですが、実際には特に問題ありません。「ホーネット」の頃はリヤは2点で計3点止めでした。2点止めの設計は87年11月の「サンダーショット」からのようですね。そういえば、88年発売の「グラスホッパー2」も2点止めです。70年代の1/12の時代から「ボディは4点止め」と思い込んでいた「オジさん」には、このようなバギー流の実に合理的な設計を見た当初は「目が点」になってました。バギーの場合、防塵を考えてシャシーとアンダーカウル、ボディが一体で考えられている場合が多いので、2点止め式でも十分なことが多いんでしょうね。

ダンパーエンドにはフルバンプした際の衝撃吸収とバンプストッパーを兼ねたOリングを付けてみました。まぁ気休めというか、あんまり深い意味はありませんけど。遊び用なんで、底に草が擦って抵抗にならないよう、車高はメいっぱい上げています。
チラリと写っているドライブシャフトは、マンタレイ系の標準装備だったサンダーショット系互換サイズのドッグボーン(TA01のページでもコメントしてます)。丸棒から切り出しただけのシャフトの両端にエンドピンを挿入し、ピン固定を兼ねてナイロン樹脂でエンド部分を丸く形成してあります。強度的にはおよそバギー走行に耐えられるようなシロモノではなく、すぐに壊れてしまうので、ガンガン走るならユニバーサルシャフトは必須。幸いにもサンダーショット用ユニバがカスタマー扱いで販売されています(部品番号4135028、1本800円)が、さすがにそろそろ終わりでしょう。既にDF-02/03用のアッセンブリユニバ(op.791、シャフト長70mm)が登場していますから、今後はこれに切り替わっていくのでしょう。でも、サンダーショット用ユニバも、サンダーショット&トップフォース復刻時にまたぞろ作り増ししてるような・・・。





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