(posted on Apr 18, 2006)
(updated on Sep 1, 2014)
タミヤRC製品・即買いカタログ
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ファイティングバギー (Item 58034)

1982年12月に発売された、タミヤ初の本格的なレーシングバギーです。
1979年に発売された「バギーチャンプ」「ワーゲンオフローダー」(Item58015/58016)
のコンポーネンツを流用、メカデッキを樹脂製の密閉式からオープンデッキ式に改め、
より実戦的な仕様に。フロントサスアームへのナイロンストラップ追加など
強度アップも図られ、ハードな走行に対応しました。

リヤサスのバネを、バギーチャンプのトーションバー方式からモノショック方式に変更し、
スイングアーム式サスアームの大きなキャンバー変化をカバーするため
バルーンタイプの「ラバースパイクタイヤ」を新たに採用したことも大きな特徴です。
ダンパーオイルのリザーブタンクを備えた「トランスバースモノショック」機構の採用で
増加した重量をカバーし、バッテリーの7.2V化に対応するため、
レーシングマスターMk.3「トルネード」から採用されたRCメカ用レギュレータ付き
スピードコントローラーを流用、RCメカ用電源を省略することで、
カタログデータ上の全備重量は先代「バギーチャンプ」と同水準の2.1kgとなっています。
定価は「チャンプ」の1万8000円に対し、1万9800円となっていました。





「タミヤ初のレーシングバギー」という言葉には違和感があるかも知れません。 もともとタミヤのキットには、「タミヤGP」という要素が常について回っていましたから、 「全部レース用じゃん」と言ってしまえばそうです。

でも、XR311は言うに及ばず、先代の「バギーチャンプ」にしても、その仕様は当時のレベルで見ても お世辞にも「レース向け」とは言い難いものでした。ダイキャストを多用したパーツはリアルで丈夫でしたが、 重量面では極めて不利でした。また、「チャンプ」が出た1979年当時、既に京商など他社では 軽量なバキューム成型のポリカ製メカボックスを装備したモデルを出していました。ただ、今から考えると、 そもそもレース走行で「メカボックス」なんて必要なかったと思いますけど・・・。
実際、当時「チャンプ」を走らせて気付いたのは、 「フタにゴムパッキンのないメカボックスで100%完璧な防塵・防水なんて無理」 ということと、 「走行用バッテリーやスピコン回りの温度変化によるメカボックス内の空気の体積変動が水やホコリの侵入を招く」 「ABS樹脂製メカボックスは超重い」といった 点でした。防塵できないならメカボックスなんて掃除が余計に面倒になるだけだし、 防水にしても、もっと簡単で軽量な方法があるだろう、と。

「ファイティングバギー」は、こうした課題に対する一つの答えとして出てきたモデルだったわけです。 だからこそ、あえてRCTでは「タミヤ初の本格的レーシングバギー」と呼ぶことにしたのです。
ところでバギーチャンプ/ファイティングバギーのリヤサスは、スイングアーム式を採用しているため、 左写真のとおり、結構なキャンバー変化が起こります。1G荷重時のサス状態はどちらかというと下側の ポジティブキャンバーが付いた状態に近い感じです。当時は「リバウンドストローク」なんて概念は 一般のRCユーザーには皆無でしたから、バネは結構パッツンパッツン(笑)。フニャフニャなタイヤで プリロードのかかったパツパツサスの帳尻を合わせる時代でした。

「チャンプ」付属タイヤは形状が四角かったので、キャンバーが付くと偏磨耗しました。 ワーゲンオフローダーのタイヤ (サイドウォールの文字がグラスホッパー用とは異なる専用品)は バルーンタイプだったので良かったんですが。 偏磨耗の問題を対策し、どのようなサスアーム位置でも均一なグリップが得られ、さらにモデルがイメージする 「砂地走行」に適したタイヤとして新たに採用されたのが、写真の「ラバースパイクタイヤ」です。 後の「フロッグ」や「ホーネット」 にも採用され、長期間愛用された大ヒットタイヤの原点はファイティングバギーにあったわけです。
ボディは一見すると先の「チャンプ」と似てますが、まったく違います。 「チャンプ」より一段とレーシーに、ルーフのアルミ部品や網といったアイテムも追加してよりリアルな ボディになっています。ただマウント位置が共通のはずなので、「チャンプ」ボディとの互換性はあるはずです。

メカボックスのオープンデッキ化やRCメカ電源の共用化、モノショックサスの採用など、意欲的な取り組みが見られた 同モデルですが、シャシーの基本部品に一切手が付けられていなかったのが致命的な欠点でした。 1982〜83年といえば、既にAYKが非常に軽量でコンペティティブな2駆レーシングバギーを発売し、 京商がチェーン駆動の四駆モデルを出してバカ売れしていた時期で、サス回りや駆動系が3年前から一切変わっていない ファイティングバギーの「古さ」は一目瞭然でした。
そもそも、「全備重量2.1kg(!)」というのはライバルより500〜700gも重い状況でしたから、 地方の草レースに代表されるオープン系のレースでは改造しまくらない限り、まるでお話にならなかったでしょう。 バッテリー2本分もの重量ハンデを覆して勝てるなんて話はありませんよね。それでも ファイティングバギーで戦おうというのは、ほとんど「マンガの世界」だったろうと察します。

もっとも当時のタミヤは、「性能よりもスケール感とリアリティの重視」というのが金科玉条でしたので、 設計を変えたくてもすぐ変えられなかったのでしょう。パーツ在庫の問題もあったでしょうし。 結果、ファイティングバギーは、タミヤGP参加者のほか、スケール感へのコダわりに共感した「大人のユーザー」や、 パーツ入手の安心感を優先する一部ユーザーなどにもっぱら売れたのでしょう。
そんなわけで、海外への輸出も含めて、セールス的にはそれなりの結果を残したとは思われるのですが、 国内では、結構、デッドストックが残ったモデルのようです。オークションでもボディパーツセットなどが比較的 入手しやすいですしね。「ホーネット」の復刻でタイヤのレストアも俄然、 容易になりましたので、実際に今から組んで走らせてみるには良さげなモデルです。

ちなみに、このキットが発売されるちょうど1ヶ月前の82年11月には、 あの初代「ワイルドウイリー」(Item58035)が発売されています。 あちらはコミカル系、こちらはシリアス系ですが、いずれもオフロードモデルの双璧として、 80年代前半のタミヤオフロードモデルを代表し、以後10年近くにわたるオフロードブーム隆盛を先駆けたわけです。 そういう意味では、当時のチビっ子達には、「手にしたことはないけど印象的な憧れのモデル」と見られていたのでは ないかと。実際には「重くて走らないから見てるだけのほうが幸せ」だったわけですが(苦笑)。
シャシーの細部については次ページ以降で解説します。

全体の構成は、主要パーツを流用した 「バギーチャンプ」「ワーゲンオフローダー」「フォードF150レインジャーXLT」(Item58027、81年10月発売) と変わりませんが、メカボックスがオープンデッキ式に変わり、印象はガラッとレーシーになっています。

リヤサスのモノショック化で重量が増えたため、メカデッキ変更による軽量化効果は相殺されています。
RCメカ電源の走行用バッテリーとの共用化で得られた80g程度の軽量化メリットも、7.2Vラクダパックの 標準化による1セル分の重量増で帳消しとなり、結局、カタログ上の全備重量は「バギーチャンプ」と同じ2.1kg、 となっています。セールスにも直結する「軽量化」に当時の開発メンバーが無頓着だったとは思えないんですが、 いかんせん、もともと致命的に重いパーツを多用していたので、どうしようもなかったのでしょう。

チャンプ系のシャシーは、FRP板とジュラルミン補強板(たぶん17S)によるユニークなハイブリッド式でした。 当時、オンロード系シャシーでは、適度にシナって高い路面追従性が得られるFRPが当たり前になっていたわけですが、 サスペンションがしっかり作動するオフロードカーではむしろ「剛性が低くサスペンションの セッティング再現性を阻害する素材」でしかありません。 細長いシャシーを実現するには、ラダータイプのフレーム構造のほうが理にかなっていたのですが・・・。 入門ユーザーにありがちなクラッシュ対策を意識していたのかも知れません。
ちなみに当時、ライバルメーカーでは2本のアルミ角材を左右に渡したフレーム構造を採用し、 大幅な軽量化と高剛性を達成していました。金属フレームは許容される変形率が小さいので クラッシュには弱かったと思いますが、構造が簡単なので交換も容易でしたし、 車体が軽くなって衝突エネルギーも小さくなり、そもそもJMRCA全日本などカツカツレースの場で クラッシュなどしていたらお話にならないわけで、そういったハイエンドの世界では 大した問題にはならなかったのでしょう。

長穴になっているのは、サーボステー止めネジです。(9/1/2014update サーボセーバー止めネジと誤認してアッカーマン変更ができるようなことを書いていましたが、間違いですスミマセン(>_<))
リヤのギヤボックスやサスペンションは、基本的に「チャンプ」からのパーツを継承していますが、 リヤバンパーを含め、モノショック回りのパーツが新たに追加されています。いずれもダイキャスト製で ヒジョ〜〜〜に重いモノです。強度的には「一生モノ」で完全にオーバークオリティ。

「チャンプ」系ではモノショックダンパーではなく、フロントと共通の単体のオイルダンパーと ピアノ線をプレスしたトーションバー(いまどきのツーリングカーのスタビバーみたいな感じのモノです) の組み合わせで車体重量を受け止めていました。ちなみにトーションバーは 先端をスイングアーム回転軸のフロント側部分に引っかける形で、シャシーの前後方向に水平に伸ばされ、 メカボックスとシャシー板のすき間に挟まれる格好で左右のバーを真鍮パイプで結合されていました。





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