Re: 追い充電
[2003/01/30 (Thu) 00:35:42]
[投稿者: ふぇら〜り伊藤]
- こんにちは!
「追い充電」にはいろいろな効用があります。 なかでも、影響が大きいのは、「運転温度の調整」という点でしょう。 これは特にNi-MHセルに大きく効いてきますが、Ni-Cdセルでも多少はあります。
追い充電というのは、基本的には「意図的な過充電」です。 過充電すると、セル内では過剰に分解された水分(水素と酸素)を捕集し、再び水に戻す、 という触媒反応が活発になりますが、この一連の反応は「発熱反応」なので、セル温度が 急激に上昇します。電池というのは、化学変化で電気を起こすものですから、通常は 運転温度が一定範囲内(溶媒が水溶液ならさすがに沸点を超えてはダメでしょう)であれば 高いほうがより高性能、といいますか、活発な化学反応を期待できるモノです。 特に、Ni-MHセルでは電池の組成上、この傾向が強くなっていますが、Ni-Cdでも 大なり小なり似たようなものです。
冷えたバッテリーに追い充電、というケースは、まさにこの「ウォームアップ」の側面が 強いと思います。
もちろん、通常のレースでは、現場で充電して、一度カットオフした電池を、 あまり間隔をおかずに追い充電するケースもよくあります。このような場合は、 既にバッテリー温度が過熱気味になっているケースも多々あるので、ウォームアップの意味は ほとんどありません。この場合、Ni-MHセルとNi-Cdセルでは取り扱いが180度変わってくるの ですが、Ni-MHでは、基本的に、温度が高いほうが充電容量が大きくなる反面、Ni-Cdセルでは 充電に関しては温度係数がマイナス、つまり温度が上がると充電できる量が減る、という 妙な特性があり、むやみに温度を上げた状態での充電は好ましくないのです。 したがって、Ni-Cdセルに限っては、 充電完了後、一度バッテリーを冷まし、レース直前に追い充電を軽くかけてやることで より多くの電気を詰め込み、放電量を増やすことができます。 放電開始時点での電圧が高くなるので、スタートのダッシュでも有利です。 ところが、 Ni-MHの場合は、温度が下がると電気はむしろ入らなくなりますから、 ヘタに追い充電をかけると、過充電でセルを傷めることになります。 3300以降のセルは過充電にも強くなっていますが、基本的に、Ni-MHセルでは 一度ピークカットした電池を「冷まして追い充電」というのはナンセンスです。 (アレックス・サンダーボルトのように、意図的にピークが出る前に充電を一度やめて 冷えた後に、改めて不足分を充電する方法は別の話です) そんなムチャな充電をするくらいなら、追い充電はせず、バッテリーウォーマーで暖めてやる ほうが、バッテリーの放電開始電圧や放電容量を高める観点からは効果的でしょう。 このあたりはワークスでもまだ研究しきれていないくらいの 最先端の部分ですから、これ以上のコメントは現時点では避けておきますが、 一応、セルタイプによってそういう違いがあることを知っておいて損はないでしょう。
* * *
さて、タミヤGPの特設コースでのイベントでは、電源設備がないことがあり、 自宅で充電してきたバッテリーを使わざるを得ない場合があります。 バッテリー使用の理想論を言えば、「使う直前に満充電」というのが望ましいわけで、 本来は現場で充電するのがベストなのですが、そうもいかないときにどうするか。
7.2Vパックを2本直列にした簡易電源を12V用の急速充電器につないで(問題ありません) 追い充電だけかける、といったことはよくやります。やれば、やっただけの効果はあります。 エキスパートクラスになれば、ほぼ必須です。でも、エキスパートの方でも、さほど勝敗に コダわっていない方は、面倒くさがってやらないケースもありますよ。ご参考まで。
というのも、追い充電の効果が出るのは最初の4〜5周がせいぜいだからです。 エキスパートクラスの決勝は、20周くらいになります。レース後半では追い充電の効果は まったく関係なくなります。昔は、燃費競争で最後の半周でバッテリーがタレたり、とかあって 追い充電が極めて重要だった時期もありますが、今は燃費の問題はほとんど無視できますよね。
また、最初から全開で走れなければ、せっかく良いバッテリーを使っても意味がありません。 さらに、そのバッテリーが、そもそも使い古しだったりすると、 いくら充電に腐心しても、「それ以前」のところで勝負がついてしまっているかも知れません。
つまり、実際のレースにおいては、単に追い充電だけでは問題は片付かない、ということです。 マシン性能の7〜8割を支配するタイヤの選択から始まり、ボディ、車重、モーター、 アンプ、そしてバッテリーとその充電方法、いろいろなファクターが勝負に影響してきます。 充電方法がバッチリでも、モーターがスカタンならダメですし、直線が速くても コーナーがメタメタなら、昨今のレースではお話になりません。フレッシュマンでもそうです。
このように書くと、「お父さん」の立場からは、子供にできる限りの状況を整えてやろうと 最高のバッテリーに最高のモーター、最高のアンプ・・・と際限なくコストをつぎ込んで しまったりしがちです(笑)。まあ、それが許されるならそのお子さんは幸せですが、 みんながみんな、そのような余裕ある条件でレースを楽しめるとは限らないわけで。
「追い充電」というのは、あくまでもひとつのファクターに過ぎない、ということを ご理解いただいたうえで、できるようであればやったほうがよし、でも、 運転技術のレベルによっては、「やるだけムダ」ということもあるでしょう。 レースへの取り組み方を考え、やるかやらないかを選択されるといいと思います。
いつもながらクドい説明になってすみません。
|